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創業(開業)

マイクロ法人と個人事業主の二刀流で失敗しないための節税ガイド

2025年1月18日

個人事業主としての活動に加えてマイクロ法人を設立し、両方を巧みに使い分ける“二刀流”が注目を集めています。

社会保険料や税金負担を軽減しながら事業を拡大できる可能性がある一方で、設立や維持のコスト、手続きの煩雑さなど検討すべき点も少なくありません。

本記事では、「マイクロ法人と個人事業主の二刀流」とは何かをわかりやすく解説し、そのメリット・デメリット、設立方法や費用、具体的な手続き、成功事例、さらによくある質問への回答まで幅広く取り上げます。

個人事業主として活動しながら法人成りを検討している方や、すでに法人を持っていて個人事業主との併用を考えている方など、少しでも社会保険料や税金の負担を軽減したい方にとって、判断材料となる情報を網羅的にお届けします。

まずは二刀流の仕組みを正しく理解し、自分の事業に最適な選択肢を見極めていきましょう。

目次

マイクロ法人と個人事業主の二刀流とは?

マイクロ法人と個人事業主の二刀流とは、1人の事業者が同時にマイクロ法人と個人事業主の両方の形態を持ち、ビジネスを運営する方法です。この手法は、税金や社会保険料の負担軽減、事業の柔軟性向上、資金調達の容易さなど、様々なメリットをもたらします。

マイクロ法人の二刀流

「二刀流」とは、「マイクロ法人」と「個人事業主」の両方で事業を行うことを指します。これは一般的な法人成りとは異なり、法人化後も個人事業主としての活動を継続する並行運用のイメージです。この方法により、それぞれの形態のメリットを最大限に活用することが可能となります。

マイクロ法人とは

マイクロ法人は、通常の法人(株式会社や合同会社など)とは異なり、社長個人が経営を行う小規模な法人を指します。主な特徴は以下のとおりです。

マイクロ法人の特徴

役員や従業員を最小限に抑えた法人形態(役員1名、従業員0~数名が多い)

事業拡大よりも節税目的で設立されるケースが多い

社会保険料負担の観点から年収(役員報酬)を抑える事例がある

マイクロ法人は法律上の定義ではありませんが、実際の運営方法において一般的な法人とは異なる点が多くあります。

個人事業主とは

個人事業主は、法人を設立せずに事業を自分名義で運営する形態です。主な特徴は以下のとおりです。

個人事業主の特徴

税務上の扱いとして青色申告・白色申告がある

開業届による簡易な始め方が可能

社会保険や税金の仕組みとして、国民年金・国民健康保険に加入する

個人事業主は設立コストがかからず、手軽にスタートできることが利点です。

マイクロ法人と個人事業主の違い・特徴

マイクロ法人と個人事業主には以下のような違いや特徴があります。

  • 法人と個人での税率や税制上の優遇制度の違い
    • 法人税と所得税の違いがあり、所得の分散により全体的な税負担を軽減できる可能性がある
  • 社会保険(健康保険・年金)の加入義務の違い
    • マイクロ法人は社会保険料の負担が個人事業主よりも軽い場合がある
  • 信用度・資金調達のしやすさの違い
    • 法人の方が信用度が高く、資金調達がしやすい傾向がある
  • 責任範囲(有限責任か無限責任か)の違い
    • 法人は有限責任、個人事業主は無限責任となる

これらの違いを活かし、マイクロ法人と個人事業主の二刀流を行うことで、事業の柔軟性を高め、税金や社会保険料の最適化を図ることができます。

マイクロ法人と個人事業主を二刀流で活用するメリット

マイクロ法人と個人事業主の二刀流は、様々な面で事業者にメリットをもたらします。以下、具体的なメリットについて詳しく解説します。

住民税や所得税の節税

マイクロ法人と個人事業主の二刀流を活用することで、効果的な節税が可能となります。

基本的な仕組み

所得を法人と個人に分散させることで、累進課税の影響を抑え、効果的な税負担の軽減が可能となります。この手法は特にマイクロ法人と個人事業主を組み合わせることで高い効果を発揮します。

具体的な節税効果

  • 所得の分散効果
    例えば個人事業主として1000万円の所得がある場合、新規の500万円の所得をマイクロ法人として得ることで、それぞれが別々に課税対象となり、累進課税による税負担を軽減できます。
  • 役員報酬による節税
    マイクロ法人からの役員報酬を低めに設定することで、個人の所得税における総合課税を抑制できます。特に収入金額が162万5,000円以下の場合、55万円の給与所得控除が適用され、住民税を含めて約8万円の節税効果が得られます。

このように、法人と個人の特性を活かした複合的なアプローチにより、より効率的な節税が実現可能となります。ただし、これらの施策を実施する際は、税理士等の専門家に相談することをお勧めします。

社会保険料の負担を軽減できる

社会保険料の面でも、二刀流には大きなメリットがあります。個人事業主の場合、国民健康保険と国民年金に加入する必要がありますが、マイクロ法人では役員報酬を抑えることで社会保険料を最小化できます(ただし、一定の要件があります)。

また、配偶者扶養を活用できるケースもあります。マイクロ法人の役員報酬を調整することで、配偶者の扶養範囲内に収めることが可能となり、さらなる社会保険料の軽減につながります。

マイクロ法人の社会保険料についてはこちらの記事でくわしく解説しています。
マイクロ法人活用術:社会保険料を最適化する方法

信頼度の向上(法人成りのメリット)

法人の名義で取引することで、社会的信用度が向上します。これにより、取引先や金融機関からの評価が高まり、融資獲得の可能性も向上します。特に、事業規模の拡大を目指す場合や、大口の取引を行う際に、法人としての信用力は大きな武器となります。

個人事業主では利用しづらい公的融資制度も、法人であれば活用できる可能性が高まります。例えば、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」や「小規模事業者経営改善資金(マル経融資)」などが挙げられます。

経費計上できる範囲が広がる

法人として認められる経費項目は個人事業主よりも広範囲です。例えば、家賃の一部を事務所として利用している場合、その割合に応じて経費として計上できます。また、接待交際費や旅費交通費なども、事業に関連していれば経費として計上可能です。

個人事業主と法人で経費区分を最適化するポイントは、それぞれの事業内容に応じて適切に経費を振り分けることです。例えば、個人事業主としての活動に関連する経費は個人事業主側で、法人としての活動に関連する経費は法人側で計上するなど、明確な区分けが重要です。

ビジネスリスクの分散

個人事業主としての事業リスクと、法人としての有限責任を使い分けることで、ビジネスリスクを分散できます。個人事業主では事業の負債に対して個人財産まで責任を負いますが、法人の場合は出資額の範囲内で責任が限定されます。リスクの高い事業を法人で行い、安定した事業を個人事業主で行うなど、戦略的な使い分けが可能です。

マイクロ法人と個人事業主の二刀流のデメリット

マイクロ法人と個人事業主の二刀流には多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。これらのデメリットを十分に理解し、対策を講じることが重要です。

会社設立に伴う初期費用・コスト

マイクロ法人を設立する際には、様々な初期費用が発生します。

基本的な初期費用の内訳

マイクロ法人の設立には複数の法定手続きが必要であり、それぞれに費用が発生します。主な費用は定款作成・認証費用、登記関連費用、印鑑作成費用などです。

具体的な費用項目

  • 定款関連費用
    公証人役場での認証を含む定款の作成・認証には約5万円が必要となります。これは法人設立の基本となる重要な支出項目です。
  • 登記・印鑑費用
    登記申請手数料、登録免許税、会社印鑑の作成費用を合計すると、約15万円程度の費用が発生します。これらは法人として活動を開始するために必須の経費となります。
  • 専門家への報酬
    司法書士や行政書士に手続きを依頼する場合、追加で10万円から20万円程度の専門家報酬が必要となることがあります。

したがって、マイクロ法人設立の際は、最低でも20万円程度、専門家に依頼する場合は40万円程度の初期投資が必要となることを念頭に置いて準備を進めることが重要です。

会社を維持するためのコスト

法人を維持するためには、継続的なコストが発生します。

基本的な維持費用

法人を継続的に運営していくためには、税金や社会保険料、専門家への報酬など、複数の定期的な支出が必要となります。

主な経常的支出項目

  • 法定税負担
    法人住民税は年間約7万円の固定費用が発生し、法人事業税は収益に応じて変動するものの、最低でも数万円程度の負担が必要です。
  • 社会保険関連
    役員報酬を支払う場合は社会保険への加入が必須となり、報酬額や事業規模に応じて保険料が変動します。この費用は経営計画において重要な検討項目となります。
  • 専門家費用
    決算や税務申告のために税理士に依頼する場合、年間20万円から30万円程度の費用が発生します。

このように、法人維持には相当額の固定費が毎年必要となります。そのため、設立前に十分な資金計画を立て、これらの経常的支出に対応できる収益構造を確保することが重要です。

経理・税務手続きが複雑化

二刀流を採用すると、経理・税務手続きが複雑になります。

二重帳簿管理の基本

個人事業主と法人それぞれで独立した会計処理と確定申告が必要となります。これは単なる二重の手間以上に、複雑な管理が求められる作業となります。

具体的な課題と対応

  • 経費按分の複雑さ
    事務所賃料や通信費などの共通経費は、個人事業と法人での使用割合に応じて適切に按分する必要があります。この作業には細かな記録と正確な計算が求められます。
  • 定申告の二重管理
    個人事業主としての確定申告と法人としての法人税申告を別々に行う必要があり、それぞれの期限や要件に注意を払う必要があります。
  • 税務調査への対応
    二つの事業形態を持つことで税務署からの注目を集めやすくなるため、より厳密な経理処理と記録の保管が重要です。

このように、二重経営には追加の管理負担が伴うため、効率的な経理システムの構築や、必要に応じて専門家のサポートを受けることを検討すべきです。

確定申告の手間が増える

確定申告の手間が大幅に増加します。

個人事業主としての確定申告は従来通り必要です。青色申告や白色申告の選択、各種控除の適用など、個人事業主特有の申告作業が求められます。

法人決算および法人税申告も必要となります。貸借対照表、損益計算書などの財務諸表の作成、法人税の計算と申告など、個人事業主の確定申告とは異なる手続きが必要です。

将来受け取る年金への影響

社会保険料負担を抑えすぎると年金受給額が減少する可能性があります。マイクロ法人の役員報酬を低く抑えることで、将来の年金受給額が減少するリスクがあります。

自力で資産運用を検討すべきという注意点があります。年金受給額の減少を見越して、個人的な資産運用や退職金制度の活用など、将来の資金計画を立てる必要があります。

二刀流を検討すべきケース・おすすめの業種

マイクロ法人と個人事業主の二刀流は、多くの事業者にとって有効な戦略となり得ますが、特に効果的なケースや業種があります。以下、具体的に解説します。

二刀流が効果的なケース

  • 社会保険料の最適化
    • マイクロ法人の役員報酬を調整することで社会保険料負担を抑制できます。特に年収を103万円以下に抑えることで配偶者の扶養に入ることも可能となります。
  • 事業拡大志向
    • 法人格による信用力向上で取引先の拡大や資金調達が容易になります。特にBtoB取引が多い場合や融資を検討している場合に有効です。
  • 高収益業種での活用
    • 年間200-300万円以上の収入がある個人事業主の場合、マイクロ法人との併用で税負担の最適化が可能です。

マイクロ法人と個人事業主の二刀流が効果的な業種の具体例として以下のものがあります。

ポイント

  • せどり・転売業:在庫管理や仕入れ資金の調達で法人格のメリットを活用できます。
  • コンサルタント・士業:高額報酬を法人と個人で分散させることで効果的な節税が可能です。
  • オンラインビジネス:個人事業主としての柔軟性と法人としての信用力を両立しやすい業態です。

サラリーマンがマイクロ法人設立を検討する際は以下の点に注意が必要です

  • 就業規則との整合性
    • 勤務先の副業規定を確認し、必要に応じて事前相談が重要です。
  • 税務上の取り扱い
    • 給与所得と事業所得の区分を明確にし、税務調査リスクに備える必要があります。
  • 社会保険のメリット限定
    • 既に社会保険に加入しているため、法人設立による保険料最適化の効果は限定的な可能性があります。

このように、二刀流の採用は事業形態や将来計画、現在の収入状況などを総合的に判断して検討する必要があります。特にサラリーマンの場合は、副業の規模や独立の可能性も考慮に入れた慎重な判断が求められます。

サラリーマンがマイクロ法人を設立する方法についてはこちらの記事でくわしく解説しています。
サラリーマンがマイクロ法人を設立する完全ガイド

マイクロ法人と個人事業主の二刀流の具体的な手順

マイクロ法人と個人事業主を二刀流で始める具体的な手順について、詳細に解説します。

会社設立前に押さえるべきポイント

業種・事業目的の明確化

マイクロ法人を設立する前に、まず業種と事業目的を明確にする必要があります。これは定款に記載する重要な情報となります。例えば、フリーランスエンジニアであれば「ソフトウェア開発」「システムコンサルティング」などを事業目的として設定します。

個人事業主の開業届をすでに出しているかどうか

既に個人事業主として開業届を提出している場合は、その状態を継続します。まだ開業届を出していない場合は、マイクロ法人設立と同時に個人事業主としての開業届も提出する必要があります。

事業規模・売上目標と設立タイミングの目安

マイクロ法人設立のタイミングは、年間売上が300万円を超えると見込まれる時期が適切です。これは社会保険料の節約や税金の節税効果が顕著になる目安となります3

マイクロ法人設立の流れ

会社の基本事項を決定

商号(会社名)、事業目的、本店所在地、資本金、事業年度などの基本事項を決定します。商号は他社と区別がつき、商標権を侵害しないものを選びましょう。資本金は最低1円から設定可能です。

定款の作成・認証、法人印鑑の作成

定款は会社の基本的なルールを定めた書類です。株式会社の場合は公証役場で認証が必要ですが、合同会社の場合は不要です。法人印鑑も作成し、登記申請時に使用します。

登記申請・登録免許税の納付

法務局に登記申請を行います。必要書類には、登記申請書、定款、役員就任承諾書、資本金払込証明書などがあります。登録免許税も納付する必要があります。

各種届出・手続き

登記完了後、税務署に法人設立届出書と青色申告の申請を提出します。また、都道府県税事務所や市区町村役場にも必要な届出を行います。社会保険や労働保険の手続きも忘れずに行いましょう。

個人事業主としての継続手続き

既に開業届を提出している場合は、そのまま個人事業主としての事業を継続します。新たに始める場合は、税務署に開業届を提出する必要があります。

役員報酬の設定と分配の最適化

月額6.3万円以下に抑える狙い

役員報酬を月額6.3万円以下に設定することで、社会保険料の負担を軽減できます。これにより、個人事業主としての社会保険加入が不要となり、コスト削減につながります。

事業利益とのバランス

個人事業主とマイクロ法人の間で売上を適切に調整し、税金と社会保険料の負担を最小限に抑えます。例えば、個人事業主の所得を103万円以下に抑えることで、配偶者控除の適用も可能になります。

配偶者や家族の扶養範囲内に収める設計

役員報酬を配偶者や家族の扶養範囲内(例:130万円以下)に設定することで、扶養控除や社会保険の扶養者としてのメリットを享受できます。

経理・税務の最適化

個人事業主の青色申告と法人決算の両立

個人事業主としての青色申告と法人の決算を適切に管理します。青色申告では最大65万円の特別控除が受けられるため、効果的に活用しましょう。

消費税の免税事業者要件

マイクロ法人設立後2期連続で課税売上高が1,000万円以下であれば、消費税の免税事業者となることができます。この要件を満たすよう、個人事業主とマイクロ法人の売上配分を調整します。

給与計算・記帳業務を効率化する工夫

クラウド会計ソフトを活用して、給与計算や記帳業務を効率化します。また、税理士に依頼することで、複雑な税務処理や最適な節税策の立案をサポートしてもらうことができます。

以上の手順を踏むことで、マイクロ法人と個人事業主の二刀流を効果的に始めることができます。ただし、法律や税制は変更される可能性があるため、最新の情報を常に確認し、必要に応じて専門家に相談することをお勧めします。

マイクロ法人の作り方についてはこちらの記事でくわしく解説しています。
マイクロ法人の作り方|節税効果やメリット・デメリット完全ガイド

二刀流を成功させるポイント・注意点

マイクロ法人と個人事業主の二刀流を成功させるためには、いくつかの重要なポイントと注意点があります。以下に詳細を解説します。

二刀流による手続きの煩雑さをどう解消するか

二刀流経営では、法人と個人事業主の両方の手続きが必要となり、煩雑さが増します。これを効率的に解消するには以下の方法が有効です。

記帳業務や給与計算などのアウトソーシング活用

クラウド会計ソフトを利用することで、記帳業務や給与計算の効率化が図れます。例えば、freeeやMoneytreeなどのサービスを活用すると、法人と個人の会計を一元管理でき、手続きの煩雑さを大幅に軽減できます。

税理士・社労士など専門家のサポート体制

複雑な税務や労務の問題に対応するため、税理士や社会保険労務士などの専門家のサポートを受けることが重要です。特に、法人税と所得税の最適化や、社会保険の適用判断など、専門知識が必要な分野では、専門家のアドバイスが不可欠です。

マイクロ法人の税理士の選び方についてはこちらの記事でくわしく解説しています。
マイクロ法人に税理士は必要?費用相場やメリット・デメリットを徹底解説

税務調査リスクを最小化する方法

二刀流経営では、税務調査のリスクが高まる可能性があります。このリスクを最小化するには以下の点に注意が必要です。

法人・個人間の取引(売上・経費)の適切な仕訳

法人と個人事業主の間の取引は、適切に仕訳する必要があります。例えば、法人の経費を個人の経費として計上したり、その逆を行ったりすることは避けなければなりません。全ての取引は実態に即して正確に記録し、必要に応じて根拠資料を保管しておくことが重要です。

同業種を法人・個人の両方で行う際の注意点

同じ業種を法人と個人の両方で行う場合、税務当局から偽装や分散とみなされるリスクがあります。これを避けるためには、法人と個人の事業内容や顧客層を明確に区分し、それぞれの事業実態を明確に示せるようにしておく必要があります。

根拠資料・帳簿を完備しておく重要性

全ての取引や経費に関する根拠資料を適切に保管し、帳簿を正確に記録しておくことが極めて重要です。これにより、税務調査時に取引の正当性を証明することができ、リスクを大幅に軽減できます

節税効果が薄れるケース

二刀流経営による節税効果が薄れるケースがあります。以下のような状況に注意が必要です。

役員報酬を高くしすぎた場合

マイクロ法人の役員報酬を高く設定しすぎると、法人税と所得税の合計が個人事業主として事業を行う場合よりも高くなる可能性があります。適切な役員報酬の設定が重要です。

事業規模が小さすぎる、あるいは大きすぎる場合

事業規模が小さすぎる場合、法人化のコストが節税効果を上回る可能性があります。一方、事業規模が大きすぎる場合、個人事業主としての税制上のメリットが失われる可能性があります。

法改正や保険制度改正によりメリットが減少する場合

税制や社会保険制度の改正により、二刀流経営のメリットが減少する可能性があります。常に最新の法改正情報をチェックし、必要に応じて戦略を見直すことが重要です。

将来の年金対策や資産運用

二刀流経営では、社会保険料の最適化を図ることができますが、将来の年金額に影響を与える可能性があります。以下の点に注意が必要です。

社会保険料を抑えるデメリット面

役員報酬を低く抑えることで社会保険料を節約できますが、将来受け取る年金額が減少する可能性があります。長期的な視点で社会保険料と将来の年金のバランスを考慮する必要があります。

iDeCoやNISAなど自助努力で補う選択肢

年金額の減少を補うため、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)などを活用した自助努力の資産形成が重要です。これらの制度を利用することで、税制優遇を受けながら将来に向けた資産形成が可能です。

ライフプランに合わせた収入配分の見直し

ライフステージの変化に応じて、法人と個人の収入配分を見直す必要があります。例えば、子育て期には個人事業主としての収入を増やし、社会保険の扶養範囲内に収めるなど、柔軟な対応が求められます。

よくある質問(Q&A)

Q1. マイクロ法人で売上なしって何が問題ですか?

マイクロ法人を設立したものの、長期間にわたって売上がまったく発生しない場合、以下のようなリスクや問題が考えられます。

銀行口座の審査に通らない、もしくは口座開設後に凍結される可能性

近年はマネーロンダリングや詐欺行為の対策として、銀行の審査が厳格化されています。法人名義の口座を開設する際、売上の見込みや実態が確認できないと、口座開設を断られることがあります。また、開設後もまったく動きがない場合、銀行から不審に思われる可能性もあります。

税務調査リスクが高まる

売上がない状態でも経費計上が多い場合、「実態のない経費計上」とみなされる恐れがあります。法人としての活動実態を税務署が疑問視すると、税務調査の対象となりやすくなるでしょう。

赤字の繰越が続くことへの注意

会社として赤字を計上し続け、法人税の納付がまったく発生しない状態が続くと、「節税を目的としたペーパーカンパニーではないか」と疑われるリスクも高まります。

経費の取り扱いに注意が必要

売上がゼロでも、法人が事業として必要な活動をしていれば一定の経費は計上できます。しかし、あくまで事業活動に直接かかわる経費であることを明確に説明できることが重要です。たとえば、役員報酬を支払う場合は、実質的に業務に従事していることを示す必要があります。

Q2. 会社設立時に自宅住所を隠せますか?

会社を設立する際、登記簿謄本には本店所在地(住所)が記載されます。自宅を登記してしまうと、登記情報を通じて第三者に自宅住所が知られてしまうリスクがあります。これを回避するための方法として、以下のような選択肢があります。

バーチャルオフィスを活用

バーチャルオフィスを利用すれば、法人登記用の住所を借りることができます。郵便物の受け取りや電話応対サービスがセットになっているプランもあり、比較的安価に導入できるケースが増えています。ただし、バーチャルオフィスの住所が大量の法人に使われていると、銀行や取引先の審査で不利になる場合もあるため、信用力のあるサービスを選ぶことが大切です。

登記用住所サービス

バーチャルオフィスよりも機能を限定した、登記専用の住所サービスも存在します。郵便物だけ転送してもらうといったシンプルな仕組みで、コスト面では比較的安いプランが多いです。ただし、実際に事務作業を行う場合は別の場所が必要となるため、自分のビジネス形態に合ったサービスかどうかを見極めましょう。

賃貸事務所やコワーキングスペースの契約

コワーキングスペースや小規模オフィスを賃貸して、その住所で登記をすることも可能です。物件によっては、法人登記を認めていない場合もあるため、契約前に「登記可能かどうか」を必ず確認してください。

Q3. マイクロ法人の設立は違法?

現時点(2025年時点)では、個人事業主が税金や社会保険料を抑えるためにマイクロ法人を設立する行為自体は違法ではありません。しかし、以下のようなリスクに注意する必要があります。

「実態のない法人」として疑われるリスク

事業実態がなく、節税スキームだけを目的として設立したとみなされると、税務署から否認される可能性があります。役員報酬や経費の計上において、業務実態や契約内容が妥当であることを常に証明できるようにしておきましょう。

将来的な法改正リスク

国や自治体が社会保険料や税制の抜け道を塞ぐため、法改正や制度の見直しを行う可能性があります。たとえば、住民税の均等割や法人住民税の均等割が引き上げられる、健康保険や年金の加入要件が厳しくなるなど、今後の動向に常にアンテナを張っておく必要があります。

管理コストが高まる

違法ではないにしても、二刀流による「管理コスト増」は避けられません。帳簿や決算、税務申告の手間が増えますし、専門家への報酬も必要になる場合があります。結果的にコストパフォーマンスが悪化しないか慎重に検討しましょう。

Q4. 個人事業主とマイクロ法人で同じ業種をやってもいい?

個人事業主とマイクロ法人で同じ業種を行うのは違法ではありませんが、税務上のリスクから避けた方がよいです。具体的には以下のようなポイントが挙げられます。

税務署から「実質的に同じ事業」とみなされるリスク

同じ業種・同じ取引先・同じ商品・サービス内容で、法人と個人事業主を使い分けて収益を分散している場合、税務署から

  • “実態としては一つの事業である”
  • “所得分散による不適切な税負担軽減(租税回避)を意図しているのではないか”

と疑われる可能性があります。法人と個人事業の取引実態を明確に区分できないと、結果的にどちらか一方に所得を合算して課税されるリスクや、最悪の場合、重加算税などのペナルティを受ける可能性もあります。

消費税の免税事業者基準などで不利になる可能性

消費税の免税事業者基準を満たしている・満たしていないか、といった判定においても、実質的に同一事業であれば合算して課税対象とみなされる可能性があります。

  • 個人事業主としては売上が小さくて免税事業者だった場合でも、マイクロ法人の分と合わせると基準を超えてしまう
  • 法人側でも、同じ取引先・同じ商品なら個人事業と合算対象になる可能性がある

こうした場合、結果的に消費税を支払う義務が生じてしまい、節税メリットが得られなくなってしまうケースがあります。

Q5. どれくらいの収入からマイクロ法人を検討すればいい?

マイクロ法人の導入メリットは、社会保険料や税率区分の調整による負担軽減が大きな動機となります。一般的には、以下のような目安が指摘されています。

年間所得が200万円~300万円あたりから検討

年間所得が200万円~300万円を超え始めると、所得税や住民税だけでなく、健康保険料・年金保険料の負担が大きくなります。このラインを超えたあたりで、法人成りのメリットを試算するケースが多いです。

法人設立にかかるコストや手間とのバランス

マイクロ法人を設立すると、登録免許税(株式会社なら15万円)や定款認証費用、印紙代などがかかります。さらに、法人住民税(均等割)などの固定コストや、決算書の作成、税理士報酬といった経営管理のコストも発生します。年間所得が300万円程度でも、経営管理コストが高くついてしまうと、かえって手取りが減る可能性があります。

まとめ

マイクロ法人と個人事業主の二刀流は、税金や社会保険料の負担を軽減し、事業の柔軟性を高めることができる魅力的な手法です。しかし、そのメリットだけでなく、デメリットや注意点も理解しておく必要があります。

メリットとしては、所得の分散による節税効果、社会保険料の負担軽減、法人としての信用力向上などが挙げられます。特に、高収入の個人事業主や、事業拡大を検討している方にとっては、大きなメリットとなるでしょう。

一方で、デメリットとしては、会社設立に伴う初期費用や維持費、経理・税務手続きの複雑化などが挙げられます。また、税務調査のリスクや、将来の年金への影響も考慮する必要があります。

二刀流を成功させるためには、以下の点に注意することが重要です。

  • 経理・税務の効率化: クラウド会計ソフトの活用や、税理士への相談など
  • 税務調査対策: 根拠資料の保管や、正確な帳簿管理
  • 将来の年金対策: iDeCoやNISAなどの活用

二刀流が適しているケースとしては、高収入の個人事業主、事業拡大志向の個人事業主、複数の事業を運営している個人事業主などが挙げられます。

結論として、マイクロ法人と個人事業主の二刀流は、メリットとデメリットを総合的に判断し、自身の事業状況や将来の目標に合わせて検討すべきです。専門家への相談も積極的に行い、最適な選択をしてください。

本記事では、二刀流の仕組み、メリット・デメリット、具体的な手順、よくある質問まで幅広く解説しました。 この情報を参考に、あなたの事業に合った最適な形態を選択してください。