顧問契約とスポット契約との違い
法人や個人事業主の事業に関する税務は、大きく分けると、経営アドバイスや税務相談に対応するサービスを提供する「通常期」と決算月から2ヶ月前後の決算書・税務申告書を作成する「決算書時期」とで業務が分かれます。
そのため、税理士との契約は、毎月顧問料を払って、月単位でサービスを受ける「顧問契約」と決算・申告の時にのみ、決算書・申告書の作成を依頼する「スポット契約」とに分かれます。
- 顧問契約
- 顧問契約では、通常期の経営アドバイスや税務相談、決算時期の決算書・申告書の作成、提出のサービスを受けることができます。
- スポット契約
- スポット契約では、決算時期の決算書・申告書の作成、提出のサービスのみになります。
顧問契約とは
顧問契約では、通常期は経営アドバイスや税務相談、決算期に決算書・申告書の作成のサービスを受けるわけですが、決算書・申告書の作成はイメージがつくと思います。
一方で通常期の税務相談はわかるけど、経営アドバイスというのが具体的な内容がイメージしづらいかもしれません。
税理士の顧問契約って何するの?具体的内容
経営アドバイスは、主に月に1回、下の画像のような試算表を用いて事業の経営成績や財務状況について面談します。
具体的には、
- 売上高や利益の前年対比・推移
- 売掛金などの債権の回収状況
- 債務の支払い状況
- 現預金の増減やキャッシュフロー
といった内容を面談の上アドバイスし、業績と財務状況を知って今後の経営に活かすためのものです。
ここまで顧問契約についてくわしく紹介しましたが、簡潔にメリット・デメリットをまとめてみました。
顧問契約のメリット
顧問契約をすることで以下のようなメリットがあります。
- 節税を効果的に行える。
- 経理の作業負担・コスト削減
- 資金調達が有利になる
- 税務相談ができる
- 税務調査に対応できる
節税を効果的に行える
節税の多くは、決算月に経費計上する必要があります。そして金額をいくらにするか確定させないと計上できません。決算期直前で、やろうとしても日程的に無理になることが多くあります。そのため、節税を効果的にするには、常日頃から業績を見て準備をしておく必要があります。
経理の作業負担・コスト削減
経理の仕事のうち会計ソフトへの入力、給料計算などは税理士に外注することができます。人件費を負担することを考えると安価にてミスの少ないプロのサービスを受けられるので、コストパフォーマンスは高いです。
資金調達が有利になる
税理士が作成した決算書は金融機関では、正確性が担保された決算書として認識されます。また、毎月の財務内容を税理士にチェックしてもらうことで資金繰りがある程度良くなります。敷いては、その後の資金調達を容易にしてくれます。
税務相談ができる
事業での取引にはけっこうな割合で課税上の問題が起きることがあります。その都度適切合対応していないと、税務調査で困ることも多々あります。顧問契約で常に税務相談ができる環境にあれば、そんな不安も払しょくできます
税務調査に対応できる
税務調査は、直前の付け焼刃では対応できません。変にごまかすほどボロが出るので、前もって対応策を講じる必要があります。顧問契約で税理士にアドバイスしてもらうことで事前にしっかりと準備ができます。
顧問契約のデメリット
- 年間の税理士費用がかさむ。
- 契約の解除が面倒。
年間の税理士費用がかさむ
顧問契約は月々の顧問料と決算時の決算料と両方がかかります。全体的に税理士費用がかかるのは否めないですね。
契約の解除が面倒
契約解除の面倒な点は手続き的なことじゃないんですね。
税理士に不満があって税理士を変更したい場合など、断りを入れるというストレスがあります。また、契約によっては事業年度単位になっている場合もあるので、契約期間が経過するまで、イヤでも付き合いが続くという精神的な負担などもあります。。
税理士の顧問契約期間は?
税理士の顧問契約は一般的には1年単位。事業年度ベースでやるのが普通。つまり、決算までを一区切りで行います。以降、通常は1年ごとに自動更新という場合が多いです。
でも解約の時は、一般的には、その月で終了。中には決算単位で解約のところもあるので注意。
顧問契約の内容について注意すべきポイントは、
ポイント
- 税理士のサービス内容
- 契約期間や自動更新
- 契約の解除はどうなるか?
- 税理士費用の金額の妥当性
- 税理士責任の範囲
顧問契約でも別途費用が発生する業務
顧問契約といっても、税務やその関連業務はすべて対応してくれるわけではありません。顧問契約の範囲外の業務で代表的なものは、
- 記帳代行
- 年末調整業務
- 給与計算
記帳代行
記帳代行というのは、会社の取引を会計帳簿に記帳することで、一般的には会計ソフトに入力して行います。記帳することによって、帳簿や決算書が作成できます。
この記帳代行は、税理士によって顧問契約内でやってくれる場合と、別途費用が発生する場合とがあります。
年末調整業務
法人や個人事業主で従業員を雇用する場合、年末に年末調整が必要です。
年末調整とは
年末調整とは、毎月従業員の給与から源泉徴収される所得税を、年末に正しく計算し精算する手続きです。
この年末調整は、顧問契約の範囲でやる税理士もいますが、別途費用が発生する場合もあります。
この場合の年末調整の費用は、相場的には
基本料:20,000円、1人につき1,000円といった感じです。
例えば従業員10人の会社の年末調整であれば、
基本料20,000円+1,000円×10人で、30,000円となります。
給与計算
従業員を雇用すると、毎月給与計算が必要になります。
給与を支給する際は、社会保険料や所得税を計算し予め徴収して支給することになります。そのため給与計算が必要になります。
給与計算の相場は
基本料:20,000円~30,000円、1人につき1,000円~2,000円となります。
税理士が対応しない業務
社会保険に関する業務
顧問契約の範囲外の業務の中にあげましたが、社会保険に関する業務は税理士ではなく社会保険労務士の業務です。
社会保険の代行業務は税理士がやると違法なので、社会保険労務士の資格がない税理士は、知識として知っている部分でのアドバイスはしますが代行業務は通常やりません。
補助金・助成金の手続き
補助金・助成金の申請は、中小企業診断士(助成金のうち雇用に関するものは社会保険労務士)が専門とする分野なので、一般的に税理士は申請を代行しない場合がほとんどです。
スポット契約とは
顧問契約について、色々見てきたけど、税理士に依頼するにしても、顧問契約みたいな継続的なものではなくて、
- 確定申告だけ頼みたい
- 自分で作った決算書や申告書のチェックをお願いしたい
- 融資に必要な書類作成を依頼したい
- 税務調査の連絡があったので立ち会ってもらいたい
と考える人も少なくないです。
そこで、通常は関与せず、要望があるときだけ対応する契約もあります。業界的にはこれをスポット契約と呼んでいます。
一般的には、スポット契約は決算や申告だけお願いするというパターンが多いです。
スポット契約は顧問契約と違って以下のメリット・デメリットがあります。
スポット契約のメリット
スポット契約のメリットは、
- 決算料だけなので税理士費用が安価で済む
- 税理士に不満があるときなど契約の解除の面倒がない
といったところになります。一方のデメリットは、
スポット契約のデメリット
- 決算時期以外で税務相談などが受けられない
- 年末調整などの業務を自分でする必要がある
- 期中に課税関係が生じる取引などの対策が不十分になることがある
- 年間を通して税理士が見ていないので税務調査で否認箇所が増える可能性がある
顧問契約とスポット契約はどちらがいいというわけではなく、今の状況と照らし合わせて、合う方法を選択しましょう。
顧問契約・スポット契約の料金と相場
顧問契約での料金は、毎月発生する顧問料と決算時期に支払いが発生する決算報酬とがあります。
顧問料と決算報酬の相場は、業種・業態・規模によって違いますが概ね、
法人の場合で、
法人の顧問料の相場
顧問料:月額3万円、決算料:顧問料の4~6ヶ月分
個人事業主の場合、
個人事業主の顧問料の相場
顧問料:月額1万円~2万円、決算料:顧問料の3~4ヶ月分
顧問料の相場についてはこちらの記事でくわしく解説しています。
税理士の顧問料の相場は概ね3万円、その根拠を業界経験者が暴露します! >
http://zeirisi-erabi.com/fee-business-advisory/
格安税理士という選択肢
顧問契約かスポット契約で悩むなかには、税理士費用を考えて顧問契約を躊躇することもありますよね。
そこで、選択肢に入ってくるのが、税理士の顧問料が圧倒的な低価格の「格安税理士」。
顧問料が安いのは魅力ですが、多くの場合はサービスが限定的だったりするので、知らずに契約すると、
- 面談回数が少ない
- 記帳代行を依頼できない
- 経験の浅い従業員が担当になる
- 対応が必要最低限
といった不満に繋がります。
格安税理士そのものが悪いのではなく、格安である理由を割り切って利用すればメリットもあります。
また、税理士との相性が良かったり、いい税理士であれば、格安プラン以外にも通常の顧問契約もあるはずなので、必要に応じて移行することも検討してみましょう。
まとめ
顧問契約・スポット契約のいずれにしても、契約のやり方であって、どちらが良いとか悪いとかの問題ではありません。
行きつくところ、税理士の人柄・サービス・料金の適正が大事で、顧問契約かスポット契約かは、あなたの事業の状況に応じて最適なものを選択するのがベストです