
売掛金をすぐに現金化できたら、資金繰りはぐっと楽になる――。
そんなニーズに応えるのが「ファクタリング」です。取引先からの入金を待たずに、保有する売掛債権をファクタリング会社に売却することで、スピーディに資金を確保できるこの手法は、建設業やIT業など支払いサイトが長い業界で特に注目されています。
本記事では、ファクタリングの基本的な仕組みから種類・手数料・他の資金調達方法との違いまで、初心者にもわかりやすく解説します。資金繰りの悩みを抱える中小企業・個人事業主の方は、ぜひ参考にしてください。
ファクタリングとは

ファクタリングの意味と基本概念
ファクタリングとは、企業が保有する「売掛債権」をファクタリング会社に売却し、現金化する資金調達の手法です。
企業が商品やサービスを提供した後、取引先からの入金を待たずに、売掛債権を資金化できるため、資金繰りを改善する目的で活用されます。特に、取引先の支払いサイトが長い業界(建設業・製造業・IT業界など)では、キャッシュフローを安定させる手段として利用されています。
売掛債権を現金化する資金調達方法
売掛債権とは、企業が取引先に対して持つ「未回収の売上」のことを指します。例えば、「月末締め翌月末払い」といった取引条件の場合、商品を納品して請求書を発行しても、実際に入金されるまで時間がかかります。ファクタリングを利用すれば、この未回収の売掛債権をファクタリング会社に売却し、早期に資金化できます。
ファクタリングには以下のような種類があります。
- 2社間ファクタリング
企業(債権者)とファクタリング会社の間で契約を締結し、売掛債権を売却する方法。取引先に知られずに資金調達できるが、手数料は高め。 - 3社間ファクタリング
企業(債権者)、ファクタリング会社、取引先(債務者)の3者間で契約を結ぶ方法。取引先の承諾が必要だが、手数料は比較的低い。
融資・借入との違い
ファクタリングは資金調達の一種ですが、銀行融資や借入とは異なります。主な違いは以下の通りです。
項目 | ファクタリング | 銀行融資・借入 |
資金の性質 | 売掛債権の売却 | 借入 |
負債の有無 | 負債にならない | 負債として計上 |
信用審査 | 売掛先の信用力が重要 | 企業の信用力が重要 |
資金調達のスピード | 早い(最短即日) | 遅い(審査に数週間~数ヶ月) |
返済義務 | なし | あり |
このように、ファクタリングは負債として計上されず、返済義務がない点がメリットです。一方で、手数料が高くなることが多いため、資金調達手段としてのコストも考慮する必要があります。
法的な位置づけ(債権譲渡契約)
ファクタリングは「債権譲渡契約」に基づいて行われる取引です。企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に譲渡することで、対価として現金を受け取ります。
民法上、債権譲渡は自由に行うことができますが、取引先との契約によっては「債権譲渡禁止特約」が含まれている場合もあります。その場合、事前に取引先の承諾を得る必要があります。また、債権譲渡登記を行うことで、第三者に対して債権の譲渡が行われたことを明確にできます。
ポイント
ファクタリングには「償還請求権なし(ノンリコース)」と「償還請求権あり(リコース)」の2種類があります。ノンリコース契約では、万が一取引先が倒産しても、ファクタリング会社がリスクを負うため、利用企業が弁済する必要はありません。一方、リコース契約の場合、売掛先が支払不能となった際に、利用企業が責任を負うことになります。
このように、ファクタリングは法的にも整備された資金調達手段であり、適切に活用することで資金繰りの改善に役立ちます。
【図解】ファクタリングの仕組み

ファクタリングには、資金調達を目的とする「買取型ファクタリング」と、貸し倒れ回避を目的とする「保証型ファクタリング」があります。
一般的にファクタリングというと、「買取型ファクタリング」を指します。買取型ファクタリングには、取引形態が2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあります。

買取型ファクタリングと保証型ファクタリング
同じファクタリングでも、買取型ファクタリングと保証型ファクタリングでは、目的が違うため、性質が異なります。
買取型ファクタリング
買取型ファクタリングは、事業者が持つ未回収の売掛債権を、ファクタリング会社が買い取るサービスです。ファクタリング会社は、売掛債権の額面から手数料を引いた金額を事業者に支払い、事業者は期日よりも早く現金を得ることができます。

保証型ファクタリング
保証型ファクタリングは、取引先企業の倒産や支払い遅延などのリスクに対して、ファクタリング会社が保証を行うサービスです。万が一、取引先企業が支払いを履行できない場合、ファクタリング会社が事業者に保証金を支払います。ただし、保証型ファクタリングでは、売掛債権自体を買い取るわけではないため、資金化は保証金の支払われる場合に限られます。

買取型ファクタリングと保証型ファクタリングの違いをまとめると、以下のようになります。
項目 | 買取型ファクタリング | 保証型ファクタリング |
目的 | 資金調達 | 貸し倒れリスクの回避 |
仕組み | 売掛債権を買い取る | 取引先企業の支払いを保証する |
資金化 | 期日よりも早く現金化できる | 保証金の支払われる場合に限られる |
手数料 | 売掛債権の額面に対して一定率 | 保証料がかかる |
担保 | 不要 | 不要 |
メリット | 資金繰りを改善できる | 貸し倒れリスクを回避できる |
デメリット | 手数料が高い | 資金化までに時間がかかる場合がある |
買取型の2社間ファクタリングと3社間ファクタリング
買取型のファクタリングには、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあります。それぞれメリットとデメリットがあり、どちらを選ぶべきかは、事業者のニーズや状況によって異なります。
中小企業・個人事業主の資金調達は2社間ファクタリングがおすすめ
中小企業・個人事業主がファクタリングを利用する際、重視するポイントは、特に以下の2点ではないでしょうか。
- 資金調達を迅速に行いたい
- 売掛先との関係を悪化させたくない
そのため、中小企業・個人事業主の資金調達は2社間ファクタリングがおすすめです。
項目 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング |
取引の流れ | ➀事業者 → ファクタリング会社 | ➀事業者 → ファクタリング会社 ②ファクタリング会社 → 売掛先へ通知(任意) |
手数料 | 比較的高め | 比較的安め |
売掛先への影響 | 影響なし(通知なし) | 影響あり(通知あり) |
審査 | 簡易 | 厳格 |
資金調達までのスピード | 早い | やや遅い |
適しているケース | 資金調達を迅速に行いたい、売掛先との関係を悪化させたくない | 手数料を抑えたい、売掛先との関係を築きたい |
なぜ、中小企業・個人事業主には2社間ファクタリングの方がおすすめなのか?2社間ファクタリングと3社間ファクタリングについて、もう少し掘り下げて解説します。
2社間ファクタリング
2社間ファクタリングは、審査が簡易で迅速なので、資金調達までのスピードが速いのが特徴です。また、売掛先への影響がないのもメリットの一つです。ただし、手数料はやや高めです。
メリット
- 審査が簡易で、資金調達までのスピードが速い
- 売掛先への通知がないため、取引先との関係を悪化させない
- ファクタリングを利用していることを隠して資金調達できる
デメリット
- 手数料が高め
- 売掛先への通知がないため、支払い遅延などのリスクがある

3社間ファクタリング
3社間ファクタリングは、手数料は安いですが、売掛先への影響があり、審査が厳格で資金調達までに時間がかかるのがデメリットです。
メリット
- 手数料が比較的安い
- 売掛先への通知があるため、支払い遅延などのリスクが低い
デメリット
- 審査が厳格で、資金調達までのスピードがやや遅い
- 売掛先への通知があるため、取引先との関係に影響が出る場合がある

ファクタリングのメリット・デメリット

ファクタリングには、おもに5つのメリットと4つのデメリットがあります。
ファクタリングの5つのメリット
ファクタリングの主なメリットは以下の5つです。
ファクタリングのメリット
- 売掛金を迅速に現金化できる(最短即日)
- 負債にならず資金調達できる(貸借対照表への影響)
- 売掛先の倒産リスクを回避できる(償還請求権なし)
- 赤字企業や信用情報に問題がある企業でも利用可能
- 担保・保証人が不要
それぞれくわしく解説します。
売掛金を迅速に現金化できる(最短即日)
ファクタリングの最大のメリットは、資金調達のスピードです。銀行融資の場合、審査や手続きに数週間~数ヶ月かかることがありますが、ファクタリングは 最短即日で資金化 できるのが特徴です。特に、急な資金繰りの悪化や、仕入れ・人件費の支払いに早急な対応が必要な場合に有効です。
【例】
- 取引先の支払いサイトが60日以上で、資金繰りに余裕がない
- 仕入れ資金を早めに確保したい
- 突発的な支払い(税金や未払い給与)が発生した
負債にならず資金調達できる(貸借対照表への影響)
ファクタリングは 売掛債権の売却 という形で資金を得るため、銀行融資のように「負債」にはなりません。そのため、貸借対照表(B/S)上の負債が増えず、財務状況を健全に保つことができます。
【ポイント】
- 銀行融資は「借入金」として計上されるが、ファクタリングは「売掛債権の売却」なので負債にならない
- 銀行の融資審査や与信枠に影響を与えず、追加の資金調達がしやすい
売掛先の倒産リスクを回避できる(償還請求権なし)
ファクタリングの「償還請求権なし(ノンリコース)」を選択すれば、売掛先が倒産しても、ファクタリング会社がリスクを負担するため、企業が返済義務を負うことはありません。
ただし、「償還請求権あり(リコース)」の契約では、売掛先が倒産した場合、利用企業が責任を負うため、契約内容をしっかり確認することが重要です。
赤字企業や信用情報に問題がある企業でも利用可能
銀行融資は、企業の業績や信用情報が重視されるため、赤字企業や過去に金融事故のある企業は審査が厳しくなります。一方、ファクタリングは 売掛先の信用力 が重視されるため、利用企業の財務状況が悪くても資金調達が可能です。
ポイント
- 過去に税金や社会保険料の滞納歴があっても利用できるケースがある
- 新設法人でも売掛債権があれば利用可能
担保・保証人が不要
ファクタリングでは、売掛債権が担保となる ため、銀行融資のように不動産や第三者の保証人を求められることがありません。特に、担保を持たない中小企業やスタートアップ企業にとっては、大きなメリットです。
ポイント
- 個人保証を避けたい経営者に最適
- 無担保で資金調達ができる
ファクタリングの4つのデメリット
ファクタリングのデメリットとしては以下の4つが挙げられます。
ファクタリングのメリット
- 手数料が高い(銀行融資と比較した場合)
- 売掛債権の金額以上は調達できない(限度額の問題)
- 3社間ファクタリングでは売掛先の承諾が必要
- 分割払いができない(一括送金)
それぞれくわしく解説します。
手数料が高い(銀行融資と比較した場合)
ファクタリングの手数料は 売掛債権の額面の2%~20% と高く、銀行融資(年利1%~5%)と比べるとコストがかかります。特に、2社間ファクタリングはリスクが高いため、手数料が高くなる傾向があります。
手数料の目安
- 3社間ファクタリング:1%~5%(売掛先が直接支払うため低コスト)
- 2社間ファクタリング:10%~20%(利用企業が支払いを行うため高コスト)
銀行融資が難しい場合は、手数料を考慮しながら利用することが必要です。
売掛債権の金額以上は調達できない(限度額の問題)
ファクタリングは 売掛債権を売却する資金調達手段 なので、売掛金以上の資金調達はできません。そのため、急な大規模な資金需要には対応できない場合があります。
ポイント
- 1,000万円の売掛債権がある場合、手数料を差し引いた 700万~950万円程度 の調達が上限
- 追加で資金が必要な場合は、新たな売掛債権が発生するまで待つ必要がある
3社間ファクタリングでは売掛先の承諾が必要
3社間ファクタリングは、売掛先の承認を得る必要があるため、利用のハードルが高くなります。特に、取引先によっては 「債権譲渡禁止特約」 が契約に含まれていることがあり、ファクタリングを利用できない場合もあります。
また、具体的な問題点としては、取引先が「ファクタリング=資金繰りが厳しい」と認識し、信用不安につながる可能性や売掛先の承諾を得るのに時間がかかる場合があります。
分割払いができない(一括送金)
ファクタリングでは、売掛債権を売却した後、売掛先が支払いをする際に 一括で入金する必要がある ため、資金繰りの調整が難しくなることがあります。
ファクタリングは、 「スピーディな資金調達」「負債にならない」「信用情報に影響しない」 という点でメリットがありますが、 「手数料の高さ」「限度額の問題」「3社間では売掛先の承諾が必要」 などのデメリットもあります。
利用する際は、コストや契約条件を十分に確認し、自社の資金繰りに合った方法を選択することが重要です。
ファクタリングと他の資金調達方法の違い

企業が資金調達を行う方法はさまざまですが、ファクタリングは 「売掛債権を現金化する」 という点で、銀行融資やビジネスローンなどの借入とは異なります。ここでは、ファクタリングと他の資金調達方法の違いを比較し、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
銀行融資との比較
銀行融資の特徴
銀行融資は、企業が銀行から資金を借り入れる一般的な方法です。金利は比較的低く、長期的な資金調達に適していますが、審査が厳しく、時間がかかるというデメリットがあります。
ファクタリングとの違い
項目 | ファクタリング | 銀行融資 |
資金調達の方法 | 売掛債権の売却 | 借入(返済義務あり) |
負債計上 | なし | あり(負債増加) |
資金調達のスピード | 早い(最短即日) | 遅い(数週間~数ヶ月) |
信用審査 | 売掛先の信用が重要 | 企業の信用が重要 |
担保・保証人 | 不要 | 必要な場合あり |
手数料・金利 | 2~20%(手数料) | 1~5%(年利) |
どちらを選ぶべきか?
- 短期間で資金が必要な場合 → ファクタリング
- 長期的な資金調達が必要な場合 → 銀行融資
銀行融資は低コストですが、審査に時間がかかり、財務状況が悪いと融資を受けられない可能性があります。ファクタリングは即日資金調達が可能ですが、手数料が高いため、コスト面を考慮する必要があります。
ABL(売掛債権担保融資)との違い
ABL(Asset-Based Lending)の特徴
ABLは、売掛債権を担保にして資金を借りる方法です。ファクタリングと似ていますが、売掛債権を「売却」するのではなく、「担保」にするため、資金を受け取った後も売掛債権は企業の管理下にあります。
ファクタリングとの違い
項目 | ファクタリング | ABL(売掛債権担保融資) |
資金調達の方法 | 売掛債権の売却 | 売掛債権を担保に借入 |
負債計上 | なし | あり(借入) |
資金調達のスピード | 早い | 比較的遅い |
売掛債権の管理 | ファクタリング会社が回収 | 企業が回収 |
返済義務 | なし | あり |
どちらを選ぶべきか?
- 売掛債権を管理したい場合 → ABL
- 負債を増やしたくない場合 → ファクタリング
ABLは銀行融資より審査が柔軟ですが、借入のため返済義務が発生します。一方、ファクタリングは負債にならないため、財務状況を悪化させずに資金調達が可能です。
手形割引との違い
手形割引の特徴
手形割引は、企業が持っている「約束手形」を銀行や金融機関に売却し、手数料を差し引いた金額を受け取る方法です。
ファクタリングとの違い
項目 | ファクタリング | 手形割引 |
売却対象 | 売掛債権 | 約束手形 |
審査基準 | 売掛先の信用力 | 手形を振り出した企業の信用力 |
取引の透明性 | 取引先に通知不要(2社間) | 手形の流通が記録に残る |
手数料 | 2~20% | 1~5% |
どちらを選ぶべきか?
- 売掛債権を現金化したい場合 → ファクタリング
- 手形を現金化したい場合 → 手形割引
手形割引は手形が必要なため、手形を使わない取引には適用できません。
でんさい割引との違い
でんさい(電子記録債権)の特徴
でんさいとは、紙の手形を電子化したもので、売掛債権の電子記録版のようなものです。でんさい割引は、この電子記録債権を金融機関に売却し、現金化する方法です。
ファクタリングとの違い
項目 | ファクタリング | でんさい割引 |
売却対象 | 売掛債権 | 電子記録債権 |
取引形態 | 2社間・3社間 | 電子取引 |
手数料 | 2~20% | 1~5% |
でんさい割引は、電子記録債権を活用するため、売掛債権の管理がしやすいですが、企業側で電子記録債権の発行・運用が必要になります。
ビジネスローンとの違い
ビジネスローンの特徴
ビジネスローンは、金融機関やノンバンクから借入する資金調達方法です。審査は比較的早く、無担保・保証人なしで借りられるケースもありますが、金利は高めです。
ファクタリングとの違い
項目 | ファクタリング | ビジネスローン |
資金調達の方法 | 売掛債権の売却 | 借入(返済義務あり) |
負債計上 | なし | あり |
資金調達のスピード | 早い(最短即日) | 早い(即日~数日) |
金利・手数料 | 2~20% | 10~18%(年利) |
担保・保証人 | 不要 | 場合によって必要 |
どちらを選ぶべきか?
- 短期的な資金調達で、売掛金がある場合 → ファクタリング
- 継続的な資金調達が必要な場合 → ビジネスローン
ビジネスローンは手数料(年利換算)で見ると安く感じますが、長期で返済すると総額が増えます。ファクタリングは手数料が高いものの、返済義務がないため、状況に応じて使い分けることが大切です。
ファクタリングの申込から入金までの流れ

ファクタリングは、スピーディーに資金調達ができるのが大きな魅力です。ここでは、申込から実際に入金されるまでの一連の流れを、具体的かつ分かりやすく解説します。
申込方法
ファクタリングの申込方法は、主に次の2つです。
- Web申込(オンライン)
ファクタリング会社の公式サイトから必要事項を入力して申し込む方法です。24時間受付している会社も多く、手続きが簡単でスピーディーです。 - 電話・メールでの申込
直接ファクタリング会社に連絡し、担当者とやり取りしながら手続きを進める方法です。初めての利用で不安がある場合に適しています。
最近は、Zoomなどを活用したオンライン面談や、LINEでの書類提出に対応している業者も増えており、非対面でも完結できるケースが多くなっています。
必要書類一覧
ファクタリングを申し込む際には、以下の書類の提出が求められます。会社の規模や取引形態によって多少異なりますが、一般的には以下の通りです。
▼ 基本的な必要書類
書類名 | 内容 |
身分証明書 | 運転免許証やマイナンバーカード(個人事業主) |
登記簿謄本(履歴事項全部証明書) | 法人の登記情報(3か月以内) |
印鑑証明書 | 代表者や会社の印鑑証明 |
決算書 | 過去1~2期分の決算報告書 |
売掛先との契約書・発注書 | 売掛債権の発生根拠を証明 |
請求書または納品書 | ファクタリング対象となる売掛金の証明 |
通帳コピー | 売上や入金状況の確認用(表紙と直近3か月分) |
会社によっては、簡易審査用として請求書だけで対応可能なところもあります。
審査基準
ファクタリングの審査で重視されるのは、「申込者」ではなく「売掛先(取引先)」の信用力です。
審査で見られるポイント
- 売掛先の企業規模や信用格付け
- 売掛先との取引実績(継続性、取引金額、支払遅延の有無)
- 売掛債権の性質(確定している請求か、すでに納品済か)
- 二重譲渡や譲渡禁止特約の有無
- 申込者側の資金使途や業種・収益状況(2社間ファクタリングでは重要)
一般的に、売掛先が上場企業や公的機関であれば審査はスムーズに通過しやすいです。
審査から入金までの期間(スピード)
ファクタリングの大きな特徴は、そのスピード感です。
- 即日対応可能なケース(最短数時間)
請求書・契約書などがすぐに揃っていて、売掛先が信頼性の高い企業である場合、申込から数時間~当日中に入金されることもあります。 - 通常のケース
1~3営業日ほどで入金まで完了するのが一般的です。審査や確認に時間がかかる場合でも、1週間以内には資金化できます。
スピードを左右する要因
- 書類の提出がスムーズか
- 売掛先の信用調査に時間がかからないか
- 契約書の締結方法(対面か電子契約か)
契約締結時の注意点
契約を結ぶ際には、以下のポイントに注意する必要があります。
▼ チェックすべき項目
項目 | 内容 |
手数料の割合 | 表示が税抜か税込か、追加費用があるか |
契約形態 | 2社間か3社間か(取引先に通知されるかどうか) |
償還請求権の有無 | ノンリコースかリコースか(売掛先倒産時の責任) |
支払い方法 | 売掛先から直接支払いか、利用者経由か |
債権譲渡登記の必要性 | 登記費用の有無や、情報公開のリスク |
また、悪質なファクタリング業者の中には、高額な手数料を取ったり、実質的に貸金業に該当する「偽装ファクタリング」を行うところもあります。契約書をよく読み、信頼できる会社を選ぶことが重要です。
ファクタリングの手数料の目安

ファクタリングを利用する際に最も気になるのが「手数料」の金額です。ファクタリングは融資ではないため「利息」ではなく「手数料」という形でコストが発生しますが、その仕組みや金額の目安をしっかり理解しておくことが大切です。
手数料の相場(パーセンテージ)
ファクタリングの手数料は、売掛債権の額面に対してパーセンテージで設定されるのが一般的です。以下は、主な契約形態別の手数料の目安です。
契約形態 | 手数料の相場 |
2社間ファクタリング | 8%~18%程度(高め) |
3社間ファクタリング | 2%~9%程度(低め) |
※上記はあくまで目安であり、売掛先の信用力や取引金額、契約内容によって大きく変動します。
手数料に影響する要因
手数料は一律ではなく、さまざまな要因によって決まります。以下のようなポイントが主に影響します。
▼ 売掛先(取引先)の信用力
- 売掛先が上場企業や官公庁などの場合、支払遅延のリスクが低くなるため手数料も安くなります。
- 一方で、設立間もない企業や経営不安のある取引先の場合、リスクを考慮して手数料が高くなる傾向にあります。
▼ ファクタリングの契約形態
- 2社間ファクタリング は売掛先に通知しないため、ファクタリング会社側のリスクが高く、手数料も高めに設定されます。
- 3社間ファクタリング は売掛先に債権譲渡が通知されるためリスクが低く、手数料も抑えられます。
▼ 売掛金の金額・件数
- 売掛金が高額で、かつ複数件まとめてファクタリングする場合は、スケールメリットにより手数料が割安になることもあります。
▼ 入金までの期間(支払いサイト)
- 売掛債権の支払い期日までの期間が長ければ長いほど、リスクが高くなるため、手数料が高くなる傾向があります。
手数料の計算方法
ファクタリングの手数料は以下のように計算されます。
- 手数料額 = 売掛金額 × 手数料率
- 入金額 = 売掛金額 − 手数料額
計算例
- 売掛金額:1,000,000円
- 手数料率:10%(2社間ファクタリング)
- → 手数料額:1,000,000円 × 10% = 100,000円
- → 実際に受け取る金額:1,000,000円 − 100,000円 = 900,000円
このように、請求書の額面通りの入金はされず、手数料分が差し引かれる点に注意が必要です。
消費税の取り扱い
ファクタリングの手数料には、消費税が課税されるかどうか という点も重要です。
- ファクタリングの本質は「売掛債権の売買」ですが、実際の手数料はサービス提供に伴うものとして 課税対象(消費税10%) になるケースが一般的です。
- 請求書を見ると、「手数料〇〇円(うち消費税〇〇円)」と明記されていることが多く、企業側では仕入税額控除の対象として処理できます。
ファクタリングの手数料についてはこちらの記事でくわしく解説しています。
ファクタリング手数料の相場は2%~18%!コスト削減のための2つのポイントとは?
信頼できるファクタリング会社の選び方

ファクタリングはスピーディーに資金調達ができる便利な手段ですが、中には悪質な業者も存在するため、会社選びは非常に重要です。ここでは、失敗しないために押さえておくべき「信頼できるファクタリング会社の選び方」を6つの視点で解説します。
会社情報の透明性を確認
まず確認すべきは、ファクタリング会社の基本情報です。
- 会社概要(所在地、電話番号、設立年など)が明記されているか
- 代表者名や運営法人が明確か
- 実在するオフィスかどうか(Googleマップなどで確認可能)
最近は「住所のみ貸し」や「レンタルオフィス」で運営している業者もあるため、ホームページだけで判断せず、実態のある企業かどうかを慎重にチェックしましょう。信頼できる会社は、会社情報を隠しません。
手数料の明朗性
信頼できるファクタリング会社は、手数料の計算方法や目安を事前に説明してくれます。
- 「手数料〇%〜〇%」などの幅がある場合でも、審査前に大まかな金額の目安を提示してくれるか
- 税抜・税込が明示されているか
- 隠れた手数料(登記費用、送金手数料、契約事務手数料など)がないか
あいまいな説明や、「審査してみないと手数料は教えられません」という業者は注意が必要です。不明瞭な手数料体系は、後で高額なコストを請求されるリスクにつながります。
担保・保証人要求の有無チェック
ファクタリングは本来、無担保・無保証で利用できる資金調達方法です。にもかかわらず、担保や代表者保証を求める業者は、ファクタリングではなく実質的に「貸金業」に該当する可能性があります。
【要注意】
- 不動産などの資産を担保にするよう求められる
- 個人保証を契約書に含めるよう強く迫ってくる
このような業者は、貸金業の登録をせずに違法に営業している場合もあるため、絶対に避けるべきです。
契約書の内容確認ポイント
契約書には、手数料や支払い条件だけでなく、法的な取り決めが記載されています。トラブルを避けるためにも、必ず細かい部分まで確認しましょう。
▼チェックすべきポイント
項目 | 確認すべき内容 |
手数料・費用 | 金額や計算方法、別途発生する手数料の明示 |
売掛債権の対象 | 譲渡する債権の範囲・金額 |
支払い条件 | 回収後の支払い義務(2社間)、支払期日 |
契約解除 | 中途解約やキャンセルの条件・違約金の有無 |
管轄裁判所 | トラブル時の解決手段として明示されているか |
不明点があれば遠慮なく質問し、説明を拒んだりあいまいな回答をする業者は避けましょう。
償還請求権の有無確認
ファクタリング契約には、「償還請求権あり(リコース)」と「なし(ノンリコース)」 の2種類があります。
- ノンリコース:売掛先が倒産しても、利用企業に支払義務がない(リスクが小さい)
- リコース:売掛先が支払不能になった場合、利用企業が責任を負う
基本的に、ノンリコース契約の方が安全ですが、手数料がやや高めになる傾向があります。契約前にどちらの方式かを確認し、リスクをしっかり理解しておくことが大切です。
おすすめのファクタリング会社については以下の記事でランキング形式で紹介しています。
ファクタリング会社のおすすめ【最新】ランキング10選
ファクタリングが適している状況

ファクタリングは、資金調達のスピードが早く、担保や保証人も不要なため、特定のシーンで非常に有効な資金繰りの手段となります。ここでは、ファクタリングが特に適している代表的な状況と、業種別の活用事例を紹介します。
大型案件受注時の資金需要
新規で大口の案件を受注した場合、材料費や外注費、人件費などの初期コストが先行して発生します。一方、入金は納品後の翌月や翌々月となることが多いため、資金繰りに一時的なギャップが生まれがちです。
▼ ファクタリング活用のポイント
- 納品前でも、発注書や契約書があれば売掛債権として評価される場合がある
- 納品・請求後なら確定債権として、早期資金化が可能
特に急成長中の企業では、チャンスを逃さず対応するために、ファクタリングによるスピード資金調達が有効です。
急な資金需要が発生した場合
税金の支払い、賞与や外注費の支払いなど、突発的に大きな資金が必要になる場面は少なくありません。こうしたときに銀行融資では間に合わないことも多いですが、ファクタリングであれば最短即日で資金調達が可能です。
▼ 代表的なケース
- 消費税や法人税の納税資金が足りない
- ボーナス月や外注費の一括払いのタイミング
- 不意の設備トラブルによる修繕費の発生
ファクタリングを活用すれば、資金ショートによる信用低下や事業停滞を未然に防げます。
銀行融資が受けられない状況
以下のような理由で、銀行からの融資が難しい場合にもファクタリングは有効です。
- 赤字決算が続いている
- 税金や社会保険料の滞納がある
- 創業して間もない(決算書がない)
- 信用情報に不安がある(代表者含む)
ファクタリングでは、利用企業ではなく売掛先の信用力が重視されるため、こうした状況でも資金調達の可能性が残されています。
売掛金の入金遅延時
本来支払われるはずの売掛金の入金が遅れた場合、資金繰りに大きな影響が出ます。特に、入金を前提に仕入れや人件費を組んでいた場合、対応が急務になります。
ファクタリング会社によっては、入金遅延中の債権についても一定の条件で買取可能な場合があります。現金が入るまでのつなぎ資金として、有効な手段になります。
業種別の活用事例(建設業、運送業、医療業、IT業など)
建設業
- 支払いサイトが長く(60日〜90日)、職人への支払いや資材仕入れなどの先払い費用が発生しがち
- ファクタリングを使えば、完了した工事の請求分を先に資金化し、次の現場にスムーズに着手可能
運送業
- 燃料代や車両整備費、ドライバーへの給与など毎月の固定費が高い
- 売掛先が大手で入金が月末〜翌月末になることが多いため、ファクタリングでキャッシュフローを平準化できる
医療業(診療報酬ファクタリング)
- 診療報酬の支払いは国保連や社保が対象のため、2ヶ月後に入金されるのが通常
- ファクタリングを利用すれば、安定している診療報酬を確実に早期現金化できる
- 開業医、歯科医院、クリニックなどにも有効
IT業・受託開発業
- 請負案件で納品・検収後の入金となるケースが多く、人件費の先出しが大きい
- ファクタリングを使えば、納品済の請求分を先に資金化し、開発リソースの拡充や新規案件対応に活用できる
ファクタリングに関するよくある質問
ファクタリングを初めて利用する際は、不安や疑問を感じる方も多いかと思います。ここでは、利用前によくある質問について、わかりやすく解説します。
ファクタリングは違法じゃないの?
ファクタリングは、企業が保有する売掛債権を第三者(ファクタリング会社)に譲渡して資金を得る、「債権売買」という合法的な取引です。貸金業とは異なり、元本返済や利息の支払い義務がないのが特徴です。
ただし、実質的に「貸付」に近い仕組みで高額な手数料を取る悪質業者(偽装ファクタリング)も存在します。正しく運営しているファクタリング会社を選べば、違法性の心配はありません。
ファクタリングでも審査落ちすることはある?
ファクタリングは銀行融資より審査が通りやすいとはいえ、無条件で通るわけではありません。 審査で主に見られるのは以下の点です。
- 売掛先(取引先)の信用力(支払い遅延や倒産リスクの有無)
- 売掛債権の内容(納品・請求済で、金額が確定しているか)
- 二重譲渡や譲渡禁止特約の有無
- 利用企業が反社会的勢力でないか、犯罪収益でないかの確認
売掛先が信用不安のある企業であったり、債権の内容が不明確な場合には、買取を断られることもあります。
ファクタリングを利用すると、信用情報に影響はある?
ファクタリングは「債権の売却」であり、「借入」ではないため、信用情報(いわゆるブラックリスト)には登録されません。
そのため、仮に税金滞納や信用情報に傷がある方でも、ファクタリングの審査にはあまり影響しません。むしろ、取引先(売掛先)の信用力が重視される点が大きな違いです。
ただし、繰り返し利用したり、ファクタリング契約の履歴が外部に知られた場合、銀行などから資金繰りに困っていると見られる可能性はあります。
ファクタリングで得た資金は課税対象になる?
ファクタリングで得たお金は、売掛債権の売却代金なので、企業の売上や益金とはなりません。 そのため、法人税や所得税の課税対象にはなりません。
ただし、ファクタリング手数料の支払いは、「支払手数料」として損金算入できる経費扱いになります。
また、ファクタリング手数料には通常消費税が課税されるため、支払時には消費税も含めて処理する必要があります(仕入税額控除の対象になることが多いです)。
まとめ
ファクタリングは、売掛金を迅速に現金化できる便利な資金調達手段として、多くの中小企業や個人事業主に活用されています。銀行融資とは異なり、負債を増やさずに資金調達ができる点や、信用情報に影響しない点が大きなメリットです。ただし、手数料や契約条件には注意が必要であり、信頼できるファクタリング会社を選ぶことが大前提となります。
また、ファクタリングはあくまで一時的な資金繰りの改善手段であることを忘れてはいけません。長期的な安定経営のためには、売掛金の回収管理やコスト構造の見直しなど、計画的な資金繰りの管理が欠かせません。
資金調達には、銀行融資、ビジネスローン、ABLなど複数の選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、自社の状況に最も適した方法を選ぶことが、経営の安定と成長につながります。ファクタリングを含めた資金調達手段を上手に活用し、柔軟で強い財務体質を目指しましょう。