令和6年6月までの1年間に行われた各地の国税局の税務調査で、所得税の申告漏れを指摘して追徴課税をした額が全国で1398億円余りに上り、これまでで最も多かったことが国税庁のまとめで分かりました。
国税庁は、令和6年から本格的に「AI」=人工知能に申告漏れの事例を学習させて税務調査を行う手法を取り入れた結果だとしています。
AI導入で、これまで見落とされていたミスが指摘されるようになりました。
これまでは大丈夫だったものも指摘されるケースが増えます。
初めてで確定申告が不安、これまで自分でやってたけど自信がなかった、という方は税理士に依頼するのがおすすめです。
とはいえ、税理士をどうやって探せばいいか?費用はどれくらいかかるのか?不安ですよね
そこで、この記事では、せどりに強い確定申告の税理士の探し方、費用相場などを解説しました。
せどりと税金の基礎知識
せどりは多くの人が副業として取り組む人気の商売方法ですが、税金に関する知識が不可欠です。ここでは、せどりの基本と税金との関係について説明します。
そもそも「せどり」とは?
せどりとは、安く仕入れた商品を高く売り、その差額で利益を得るビジネスモデルです。具体的には、以下のような特徴があります。
- 中古品や在庫過多の新品を安価で購入
- 主に本、CD、DVDなどのメディア商品が対象
- オンラインマーケットプレイスや実店舗で販売
- 専門知識や趣味を活かして商品を選定
せどりの魅力は、比較的少ない初期投資で始められることと、自分の得意分野や興味のある商品を扱えることです。
せどりと転売の違い
せどりと転売は似ているビジネスモデルですが、いくつかの違いがあります。
- 仕入れ価格
- せどり:定価よりも安く仕入れる
転 売:通常価格(定価)で仕入れる
- 対象商品
- せどり:中古品や在庫過多の商品が中心
転 売:限定品や入手困難な商品も対象
- 販売価格
- せどり:適正な利益を乗せて販売
転 売:高額で販売することもある
せどりは比較的安全で持続可能なビジネスモデルとされる一方、転売は倫理的な問題を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
確定申告は必要?条件と基準を解説
せどりの収入に関する確定申告の必要性は、本業か副業か、そして所得額によって異なります。以下、具体的なケースと注意点を解説します。
せどりで確定申告が必要となるケース
確定申告が必要なケースは所得によりますが、本業か副業かによって違いがあります。
本業としてのせどりの場合
個人事業主やフリーランスとして本業でせどりを行っている場合、所得が48万円超で確定申告が必要な目安になります。
なぜ、48万円かというと、
個人事業主は、納付する所得税があれば確定申告が必要で、納付する所得税がなければ確定申告は不要です。
所得税は、所得から所得控除を引いて、所得税率をかけて算出します。
所得控除
所得控除とは、所得から差し引くもので、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除等16種類あって、個人によって適用できるものは違います。
控除には配偶者控除や社会保険料控除など複数ありますが、誰にでも適用されるのは「基礎控除」のみです。この基礎控除は、年間の合計所得が2,400万円以下であれば48万円まで適用されます。
副業としてのせどりの場合
会社員が副業をしている場合、副業で得た年間の所得が20万円を超えると、確定申告が必要になります。
通常、会社員は年末調整で所得税の計算が終わっていますが、給与以外の所得が20万円以下であれば、確定申告は不要です。
確定申告しないとどうなる?リスクと罰則
確定申告しない場合、法的な罰則として無申告加算税と延滞税が課されます。
■無申告加算税が課せられる
■延滞税が課せられる
無申告加算税
無申告加算税は、申告をしなかったことに対してかかる税金です。
本来納めるべき税金(本税)に率を乗じて計算します。
確定申告の申告義務がある人が、提出期限に申告しないと無申告加算税が課されます。
また、本来納めるべき本税を期日に収めていないので、その分の延滞税が発生します。
- 無申告加算税
- 無申告加算税は、申告をしなかったことに対してかかる税金です。本来納めるべき税金(本税)に率を乗じて計算します。
税務調査で指摘された場合、
本税に対して50万円までの部分に15%、50万円を超える部分に対して20%かかります。
税務調査の事前通知後であれば、
本税に対して50万円までの部分に10%、50万円を超える部分に対して15%かかります。
- 税務調査の事前通知
- 税務調査の事前通知というのは、調査官が税務調査に行く場合、法律上、「税務調査に行きますよ」ということを通知しなければいけません。この通知のことをいいます。
自主申告であれば、無申告加算税は、かなり軽減されます。
延滞税
延滞税は税金の未払いに対する利息のようなものです。
- 延滞税
- 延滞税の利率は、期間を二つに分けて考えます。
法定納期限の翌日から
①「完納の日または2月を経過する日」‥年7.3%か延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い方
②「2月を経過する日の翌日から完納の日」‥年14.6%か延滞税特例基準割合+7.3%のいずれか低い方
確定申告のやり方や流れについてはこちらの記事で解説しています。
確定申告のやり方や流れと必要書類まとめ
申告だけでは安心できないAI導入による税務調査の実態
2024年11月29日の国税庁の発表によると、今年6月までの1年間で所得税の申告漏れに対する追徴課税額が1398億円に達し、過去最多となったことが明らかになりました。この結果は、国税庁がAI(人工知能)を活用した税務調査手法を本格的に導入した成果だとされています。
なぜ税務調査が強化されたのか?
国税庁は、昨年からAIを用いて過去の申告漏れ事例を学習させることで、申告内容の不備やリスクの高い納税者を重点的に調査する新しい手法を導入しました。
AIが分析するポイントには以下のような点が含まれています。
- 申告書の不備:書類の記載ミスや不自然な数値。
- きりのよい金額での申告:端数がない収支報告。
この結果、60万件以上の調査が行われ、約31万件で申告漏れが見つかりました。
せどりをしている人は特に注意!
せどりはフリマアプリでの売上も多いため、申告漏れのリスクが高い業種と見なされています。AIによる分析で売上データや取引履歴が徹底的にチェックされるため、次のような人は要注意です。
- 売上管理を曖昧にしている人
- 帳簿を正しくつけていない人
- 少額取引を申告していない人
税理士に依頼するメリット
税理士に依頼することで、せどりビジネスの税務管理を効率化し、様々なメリットを得ることができます。ここでは、主要なメリットと注意点について詳しく解説します。
節税対策や税務調査への対応力
税理士に依頼することで、以下のような節税対策や税務調査への対応が可能になります。
- 適切な経費計上
- ・せどりビジネス特有の経費(仕入れ費用、送料、梱包材など)を漏れなく計上
・固定資産の減価償却や在庫評価など、複雑な会計処理を正確に行う
- 税制改正への対応
- ・常に最新の税制に基づいた適切な申告を行う
・新たな控除制度や優遇措置を活用した節税策の提案
- 税務調査への備え
- ・適切な帳簿管理や証憑書類の整理方法をアドバイス
・税務調査時の立会いや対応策の提案
税理士の専門知識を活用することで、合法的かつ効果的な節税が可能になり、税務リスクを最小限に抑えることができます。
収支管理や帳簿作成を効率化できる
税理士に依頼することで、以下のような収支管理や帳簿作成の効率化が図れます。
- クラウド会計ソフトの活用
- ・適切なソフトの選定と設定のサポート
・データの自動取り込みや仕分けの効率化
- 月次決算の実施
- ・定期的な収支状況の確認と分析
・キャッシュフロー管理や利益率の改善提案
- 適切な記帳方法の指導
- ・せどりビジネスに適した勘定科目の設定
・正確な仕入れ管理や在庫評価の方法
これらの支援により、事業者は帳簿作成にかける時間を削減し、本業に集中することができます。
確定申告を丸投げできる安心感
税理士に確定申告を依頼することで、以下のような安心感が得られます。
- 申告書類の正確な作成
- ・複雑な計算や書類作成を専門家に任せられる
・記入ミスや計算間違いのリスクを低減
- 期限内申告の確実な実施
- ・申告期限の管理と適切なスケジューリング
・必要書類の準備漏れを防止
- 税務相談の随時対応
- ・年間を通じての税務相談が可能
・事業拡大や新規事業展開時の税務アドバイス
ただし、税理士に丸投げすることで、自身の税務知識が向上しないリスクもあります。税理士と協力しながら、基本的な税務知識を身につけていくことが重要です。
税理士への依頼方法と費用相場
税理士に依頼する際の費用は、事業規模や依頼内容によって大きく異なります。ここでは、せどりビジネスにおける税理士費用の相場と、費用を抑えるコツについて解説します。
税理士費用の相場はどれくらい?
せどりの税理士費用は、せどりだから特別に高いということはなく、個人事業主の税理士費用の相場と同じです。
個人事業主の税理士費用の相場は、顧問契約の場合、月額顧問料2万円+決算報酬12万円で年間36万円、確定申告のみのスポット契約で14万円が目安です。
- 顧問契約
- 継続的に税務や経理のサポートを行う契約のことです。定期的に面談で財務分析、税務相談を行い、税理士費用は毎月月額の顧問料と、合わせて確定申告時に決算報酬が発生します。
- スポット契約
- 個人事業主の場合のスポット契約は、確定申告期に決算書・確定申告書の作成を行います。税理士費用は確定申告時の決算報酬のみとなります。
顧問契約の相場
顧問契約の相場を3つの税理士事務所の料金表から算出した結果は以下のとおりです。
顧問契約の相場
訪問頻度 | 3ヵ月に1回 |
月額顧問料 | 20,000円 |
決算報酬 | 120,000円 |
記帳代行 | 月額5,000円を加算 |
月額顧問の場合は、定期で面談するのが一般的です。
ただ、個人事業の場合、取引規模も小さく、予算の関係もあって毎月の面談は希望しないケースが多くあります。そのため、訪問頻度を3か月に1回や年2回・3回と決めていることが多いです。
平均すると、3ヵ月に1回程度が多く、3ヵ月に1回の面談で算定した顧問料は20,000円、決算報酬は120,000円となります。
会計ソフトの入力を自分でやる場合、記帳代行料が加算されず、全て税理士に丸投げすると、記帳代行料として月額5,000円が加算されます。
スポット契約の相場
スポット契約の相場を3つの税理士事務所の料金表から算出した結果は以下のとおりです。
スポット契約の相場
売上 | 1,000万円以下 | 2,000万円以下 | 3,000万円以下 | 5,000万円以下 |
確定申告報酬 | 100,000円 | 130,000円 | 150,000円 | 200,000円 |
元となった税理士事務所の料金表などは以下の記事で紹介しています。
個人事業主の税理士費用の相場|月額2万円・スポット14万円が目安
費用を抑えるコツ
税理士費用を抑えるためには、以下のような方法があります。
記帳代行を依頼する場合
- クラウド会計ソフトを活用し、日々の取引データを自身で入力する
- 税理士には月次や四半期ごとのチェックのみを依頼する
- 記帳代行料金は通常、月額顧問料に5千円〜1万円程度加算される
このように自身で基本的な記帳を行うことで、税理士費用を大幅に抑えることができます。
確定申告のみスポットで依頼する場合
- 年間を通じての顧問契約ではなく、確定申告時期のみスポットで依頼する
- 自身で1年間の帳簿をまとめ、必要書類を整理してから依頼する
- スポット依頼の場合、料金は通常10〜15万円程度
ただし、スポット依頼の場合、年間を通じての税務相談や経営アドバイスは受けられないため、事業規模や必要なサポート内容を考慮して選択する必要があります。
税理士への依頼は、自身のせどりビジネスの規模や成長段階に合わせて検討しましょう。初期段階では費用を抑えつつ、事業が成長するにつれて専門的なサポートを受けることで、効率的な税務管理と事業拡大の両立が可能になります。
税理士はいつ頼むべき?依頼時期の目安と注意点
確定申告は、受付期間が一定時期に集中するため、税理士への依頼はタイミングが重要です。
9月~11月(準備期間)
・余裕を持って書類整理や税理士選びが可能。
・控除証明書の収集や整理を開始。
・複数の税理士に相談し、自分に合った税理士を選べる。
12月~1月(年末調整期間)
・税理士は年末調整で忙しくなるため、早めの予約が必要。
・資料は事前に準備してスムーズな対応を心がける。
2月~3月(確定申告期間)
・繁忙期のため、新規依頼が難しくなる可能性が高い。
・急な相談や修正への対応が困難になることも。
期限が迫ってからの税理士への依頼や注意点はこちらの記事で解説しています。
確定申告を税理士にいつ頼むべき?依頼時期と成功のポイントを徹底解説
せどりを税理士に丸投げする際の注意点
丸投げとは、個人事業主が確定申告に関する業務をすべて税理士に任せる方法です。これには以下のようなメリットがあります。
- 帳簿作成から申告書提出まで代行してもらえるため、経理の知識がなくても安心。
- 領収書やレシートを整理して渡すだけで対応可能なサービスも多く、忙しい事業主に最適。
注意点①データ提供と効率化の工夫
せどりにおける売上や仕入れは取引量が多くなりがちです。このため、効率的に税理士に対応してもらうための準備が必要です。
売上データはプラットフォームのエクスポート機能を利用して提供しましょう。例えば、Amazonの売上レポートをCSV形式でエクスポートして渡すことで、税理士が会計ソフトにインポートしやすくなります。
また、クレジットカードを利用した仕入れについては、クレジットカード明細をCSV形式でダウンロードし、税理士に渡しましょう。これにより、手作業による入力を減らし、時間とコストを節約できます。
注意点②クレジットカードと料金トラブル回避
仕入れに使用しているクレジットカードが複数ある場合は、あらかじめ税理士にその枚数を伝えておきましょう。税理士が2~3枚を想定していたにもかかわらず、10枚近くあった場合、料金面でトラブルになる可能性があります。
記帳代行料は手間の多さに比例して高くなります。売上や仕入れデータを整理して提供することで、税理士の作業を簡素化し、コストを抑えることができます。
せどりにおすすめの税理士の選び方
せどりにおすすめの税理士の選びのポイントは以下の3つです。
税理士選びのポイント
- せどりの知識がある
- 税務調査に強い
- 相性が良い
せどりの知識がある
せどりには、一般的な物販とは異なる会計上の処理や注意点があります。例えば、以下のような問題点はせどり特有のもので知らないと正しい処理ができません。
- メルカリでの売上計上のタイミングに注意
- メルカリで入金時に売上を計上すると、メルペイ残高が売上漏れになる可能性があるため、注意が必要です。
- 年末近辺のネット仕入れの注意点
- 年末にネットで仕入れた商品は、発送が年明けになることが多く、これを知らないと棚卸し漏れの原因となります。
- せどりにおける自宅保管のメリットと注意点
- せどりでは自宅保管スペースが必要で、家事関連費を適切に計上しないと節税メリットが活かせません。税理士は知っている知識ですが、申告書作成時に、思いつくかどうかはせどりを知っているかどうかに影響されます。
せどりの知識があるかは、クライアントにせどりの業者がいるかどうかで、ある程度判別が可能です。
税務調査に強い
国税庁がインターネット取引に注目する中、せどりで税理士を選ぶなら、税務調査に強いことは必須条件です。
税務調査に強い税理士の特長をまとめると、以下の5つがポイントになります。
- 専門知識と豊富な経験
最新の税制改正に対応し、多くの税務調査経験から的確に対応する能力を持っています。
- 交渉力とコミュニケーション能力
減額交渉や調査官との交渉が得意で、納税者を守る毅然とした対応ができます。
- クライアントへのサポート体制
事前に資料を準備し、問題点を洗い出しておくことで、調査当日の不安を解消し適切な指導を行います。
- 透明性と信頼性
常に透明な対応を心がけ、信頼関係を維持し、予期しない問題にも誠実に対応します。
- 継続的なフォローアップ
調査後もクライアントの疑問や不安に対応し、将来の税務リスクに対するアドバイスを提供します。
相性が良い
税理士とは長期的なお付き合いになるため、相性が良いことが重要です。面談などでしっかりとコミュニケーションを取り、信頼できる税理士を選びましょう。
具体的には、以下のような点に注意して税理士を選びましょう。
- 話しやすく、相談しやすい
- 質問に丁寧に答えてくれる
- 迅速に対応してくれる
税理士紹介サイトを活用して最適な税理士を見つけよう
せどりに強い税理士を探すには税理士紹介サイトを使うと便利です。その理由は以下の3点です。
- せどりに強い税理士を効率よく探せる
- 料金プランや対応範囲を比較できる
- 無料で相談・マッチングができる
せどりに強い税理士を効率よく探せる
税理士紹介サイトでは、せどりやネット販売に詳しい税理士を簡単に検索できます。せどり特有の仕入れや経費管理、在庫評価のポイントを理解している税理士を選べるため、業種に特化したサポートを受けられます。
2. 料金プランや対応範囲を比較できる
紹介サイトでは、税理士ごとの料金体系や提供サービスを比較できるため、予算やサポート内容に合った税理士を選ぶのに便利です。例えば、記帳代行のみ依頼する場合や、確定申告書類の作成・提出を丸投げする場合など、ニーズに応じたプランを見つけやすくなります。
3. 無料で相談・マッチングができる
ほとんどの税理士紹介サイトでは、無料相談やマッチングサービスが提供されています。税務相談や具体的な依頼内容を事前に伝えることで、条件に合った税理士を紹介してもらえます。初めて税理士を利用する人でも、安心して依頼できる仕組みが整っています。
おすすめの税理士紹介サイトについてはこちらの記事で解説しています。
税理士紹介サイトのおすすめ【2025年1月最新】主要5社を徹底比較!
せどりは帳簿管理や経費計上が複雑になりやすく、確定申告で税務調査のリスクも高いため、プロのサポートが重要です。税理士紹介サイトを利用すれば、業種に強い専門家を効率よく探し、コストやニーズに合った最適な税理士と出会えるため、非常に便利です。