「会社を立ち上げたいけど、税理士って本当に必要なの?」そんな疑問をお持ちの方は意外と多いはず。
確かに会社設立自体に税理士は必須ではありませんが、資本金や決算期の設定、融資・補助金の活用など、知っているだけで大きな差が出るポイントをカバーできる専門家でもあります。
短期的な費用を抑えたいのか、それとも長期的に節税を図りたいのか――あなたの選択で、その後の経営が大きく左右されます。
本記事では、税理士を依頼すべきか迷うときに押さえておきたいメリット・デメリットや探し方のコツを、わかりやすく解説します。あなたの起業が、より確実でスムーズに進むヒントがきっと見つかるはずです。
会社設立時に税理士は必要か?
会社設立そのものに税理士は必要ではありません。また、会社設立と登記の専門家は司法書士です。
ただし、司法書士と提携して設立をサポートする税理士もいます。設立サポートに特化した税理士は、設立後の手続きや、会社を設立する時の注意点などノウハウを持っているのが特長です。
税理士に依頼する場合と自分で設立手続きを行う場合の違い
会社設立を自分で行う場合と、税理士に依頼する場合の違いをまとめると、以下の表のようになります。
観点 | 税理士に依頼する場合 | 自分で手続きを行う場合 |
---|---|---|
費用面 |
・初期費用が増加する可能性あり ・長期的な節税やリスク回避のノウハウを得られる |
・税理士報酬が不要で短期的なコストを抑制可能 ・長期的な節税ノウハウを得る機会が限定的 |
手間・時間面 |
・書類作成や提出作業を代行してもらえる ・手間を大幅に削減可能 |
・書類準備や役所とのやり取りに時間と労力が必要 ・他の業務に使える時間が減少 |
リスク面 |
・専門知識により法令・税務関連のミスを防止 ・修正や罰則を受けるリスクを軽減 |
・手続きの漏れを常にチェックする必要あり ・リスク管理に時間と注意力を要する |
税理士に相談できる主な内容
会社設立で税理士に相談できる内容は、主に以下の4つです。
- 設立手続きの流れや必要書類
税理士は、会社設立に必要な書類の作成と提出をサポートします。具体的には、定款の作成や設立登記申請書の準備などが含まれ、手続きの流れを詳細に説明してもらえるので、スムーズに進めることができます。
- 会社設立に伴う税務上のポイント
会社の将来的な成長や税務戦略を考慮し、最適な決算期や資本金額、法人形態を提案します。例えば、事業の特性や予想収益に合わせた決算期の設定、税負担を考慮した資本金額の決定など、専門知識に基づいたアドバイスを受けられます。
- 補助金・助成金・融資のサポート
税理士は、利用できる補助金や助成金、融資制度について情報を提供し、必要に応じて申請のサポートも行います。適切な制度を活用することで、会社設立後の資金調達を円滑に進められる可能性が高まります。
- 記帳・会計処理・各種申告業務の代行
日々の記帳や会計処理、確定申告などの税務申告業務を代行することで、経理担当を雇うコストや社内リソースの負担を削減できます。正確な会計処理と適切な税務対応が期待できるため、経営者は本業に集中しやすくなるでしょう。
会社設立時に税理士を依頼するメリット
会社設立時に税理士に依頼するメリットは以下の6つです。
税理士に依頼するメリット
- むだな税金を支払わなくて済む(節税・税務リスク回避)
- 補助金・助成金、融資のアドバイスを受けられる
- 面倒な記帳・税務申告等をアウトソーシングでき、本業に集中できる
- 会社設立時に必要な決定事項をプロ目線でチェックできる
- 必要な届出書類の作成・提出を代行してくれる
- 税務署や各行政機関とのやり取り(電話連絡含む)を代行
むだな税金を支払わなくて済む(節税・税務リスク回避)
- 設立時期・資本金・決算期の最適化
- 税理士は事業計画や財務状況を踏まえ、最適な設立時期や資本金額、決算期を提案してくれます。たとえば、決算期の設定を工夫することで初年度の法人税を抑えたり、資本金を1億円未満にすることで中小企業向け税制優遇を受けやすくなったりします。
- 消費税の免税事業者期間の活用
- 消費税の課税事業者となるタイミングを調整し、免税事業者としての期間を最大限に利用する方法を示してくれます。これにより、創業初期の税負担を軽減し、資金繰りに余裕を持たせることが可能です。
専門知識をもつ税理士が関与することで、節税対策だけでなく、長期的な税務リスクの回避にもつながります。
補助金・助成金、融資のアドバイスを受けられる
- 公的支援制度の情報入手と申請サポート
- 税理士は、最新の補助金・助成金情報に精通しています。たとえば、「地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)」などを活用する際、申請書類の作成や審査対策をサポートしてくれます。
- 事業計画書の作成フォローや金融機関との連携
- 税理士のサポートにより、説得力のある事業計画書を作成し、銀行や信用金庫との交渉を円滑に進めることができます。これにより、融資の獲得確率が高まり、事業拡大のチャンスを広げられます。
創業時は資金調達が大きな課題となるため、公的制度の活用や金融機関との連携が欠かせません。税理士の専門知識があると大きな心強さとなります。
面倒な記帳・税務申告等をアウトソーシングでき、本業に集中できる
- 記帳代行や経理指導のメリット
- 税理士に経理業務を委託すれば、経営者は営業活動や商品開発など本業に注力できます。また、正確な会計処理により経営状況を客観的に把握しやすくなります。
- 節税・経営アドバイスも含めた一括サポート
- 単なる記帳代行だけでなく、財務分析や経営アドバイスも受けられます。経営判断の質が向上し、長期的な会社の成長をサポートしてくれます。
経営者が本来のビジネス活動に集中するためにも、税理士の一括サポートは大きな利点となります。
会社設立時に必要な決定事項をプロ目線でチェックできる
- 設立形態(株式会社/合同会社など)の選択や役員報酬の決め方
- 会社の事業規模や将来計画を踏まえ、どの設立形態が適切か、また税務上有利な役員報酬の設定はどのようにすればよいかなど、プロの視点で助言を得られます。
- 事業内容や法人名の定款への反映
- 将来の事業拡大を見据え、定款に記載する事業目的や商号を適切に設定することが重要です。税理士はその点も含め、定款作成時のアドバイスを行います。
設立時のちょっとした判断ミスが、後々の手続きや税務面で大きな影響を及ぼすことがあります。税理士のチェックは安心感をもたらします。
必要な届出書類の作成・提出を代行してくれる
- 税務署・都道府県税事務所・市区町村役場などへの届出
- 会社設立時には多くの書類を提出する必要がありますが、税理士が作成から提出まで代行してくれるため、手間や時間の負担を減らせます。
- 登録免許税や印紙税などの確認・納付
- 必要税額の確認や納付を代行してもらうことで、手続きのミスや遅延を防ぎ、スムーズに設立を完了できます。
書類不備による手戻りや届出の遅延は、創業時に余計なストレスとなります。こうした煩雑な作業は専門家に任せるのが得策です。
税務署や各行政機関とのやり取り(電話連絡含む)を代行
- 開業後も税務調査や問い合わせ時の対応がスムーズ
- 税務調査の際、税理士が立ち会うことで適切な対応が可能となり、余計なトラブルを回避できます。
- 行政からの通知や問い合わせにも柔軟に対応
- 役所や税務署からの問い合わせを税理士が代行・サポートしてくれるため、業務が滞ることを防げます。
創業後も税務や行政とのやり取りは頻繁に発生します。税理士を顧問にしておけば、そうした業務が格段に楽になるでしょう。
税理士をつけるタイミングは「会社設立前」がよい?
起業を考える際、「税理士をいつ依頼すればいいのか」という疑問を持つ方は多いです。結論からいえば、会社設立前の段階で税理士をつけることには大きなメリットがあります。会社を登記してから顧問契約をする方も少なくありませんが、事前に税理士のアドバイスを受けておくことで、資本金や決算期などの重要事項を最適な形で決定できる可能性が高まります。
設立前に依頼する6つの理由
安く会社を作れる可能性
会社を設立するには、定款の作成や登記申請などの法的手続きに加え、設立時に支払う登録免許税やその他の費用がかかります。税理士や行政書士が提供する「会社設立サポート」などのサービスを利用すると、以下のように費用を抑えて会社を作ることができるケースがあります。
- 定款の電子認証による費用の削減
- 提携する司法書士や行政書士との連携によるスムーズな登記手続き
結果的に税理士は設立後に行う会計・税務手続きまでを見据えてサポートしてくれるため、後から余計な修正コストや漏れが発生しにくいのもメリットです。
登記内容を慎重に決められる(資本金・決算期など)
会社を設立する段階で決める「資本金」「決算期」などの項目は、税制上や経営上の影響が大きい要素です。たとえば、以下のように最適な判断は事業内容や将来の見通し次第で異なります。
- 資本金をいくらに設定するか → 経営の信用力や税負担、社会保険の適用などに影響
- 決算期をいつに設定するか → 毎年の決算スケジュールや法人税の申告時期に影響
税理士と相談しながら慎重に決めることで、後々の修正や不都合を回避しやすくなるでしょう。
設立準備期間の顧問料がかからないケースが多い
税理士に依頼する際、通常は「顧問契約」を結ぶ形になります。しかし、実際には事業開始前(設立準備期間)については、報酬が無料もしくは格安で提供されるサービスを用意している税理士事務所も珍しくありません。
つまり、会社設立前に相談しても、必ずしも高額な顧問料が発生するわけではないのです。特に設立前後の時期は費用負担をできるだけ抑えたい方が多いので、この点は重要な比較ポイントになります。
創立費・開業費などの取り扱いを正しく処理できる
会社設立に関わる費用は、「創立費」「開業費」などの勘定科目で処理できることがあります。これらは償却期間を設定することで、経費を分散して計上できるなど、税務上のメリットを得られる可能性があります。ただし、正しく計上するためには、以下のような知識が必要です。
- 資本金を準備する前に支出した費用は“創立費”に該当するのか
- 設立後にかかった準備費用は“開業費”として処理できるのか
税理士に設立前から関わってもらうことで、これらの費用の正しい処理方法を見逃さずに、最大限に活用することが可能になります。
経理指導を早期に受けられる(会計ソフト選定、記帳ルールなど)
会社を設立して事業を開始すると、毎日の取引を記帳し、月次や年次で決算書を作成する必要があります。特に小規模事業や創業期は、会計ソフトの選定や経理ルールの確立が企業の土台を支える大切な作業です。
税理士と早期に相談すれば、以下のことが着実に進められます。
- 事業規模や将来の拡大に合わせた会計ソフト選び
- 費用や売上を適切に分類するための記帳体制の整備
- 経費のルール作り(領収書の保管方法や精算フローなど)
経理体制がしっかりしている企業は、経営判断に必要な数字を素早く把握できるため、意思決定を効率的に行いやすくなります。
実は「会社を作らないほうが得」なケースを見逃さない
個人事業主としてスタートした方が税金面や社会保険面で有利になる場合もあります。たとえば、まだ事業の見通しが不透明な段階や売上規模が小さいうちは個人事業主でいたほうが得というケースも考えられます。
税理士は、個人事業主から法人化するタイミングについても幅広い知識を持っています。もし会社設立前に相談をすれば、「そもそも法人化が本当に得策か?」という視点を提供してもらえるため、結果的に無駄なコストを抑えられる可能性が高まります。
会社設立後に依頼するメリットとデメリット
メリット:会社運営・経理体制の方向性が固まった後に契約できる
会社設立後に税理士に依頼するメリットとしては、自分の中で経営方針や経理体制の方向性がある程度固まってから税理士を選べる点が挙げられます。具体的には、以下の3つのポイントを把握した状態で税理士を探せるため、より的確なマッチングが期待できます。
- どの程度のサポートを必要としているか
- 月次決算をどのレベルでやっていきたいか
- どのくらいコストをかけられるか
最初は自力で経理を回してみて、ある程度の知識を身につけた後に税理士をつければ、スムーズにコミュニケーションできるという利点もあります。
デメリット:設立時の重要事項を決める段階でプロの助言が得られない、結果的に修正コストがかかる可能性
一方で、後から税理士を依頼する場合のデメリットとしては、会社設立時に決める資本金や決算期、登記上の内容などについて、プロの助言が得られないことが挙げられます。
後々「やっぱり決算期を変えたい」「資本金を増資(または減資)したい」などと修正が必要になった場合、追加の手間や費用が発生するリスクがあります。
また、設立直後は領収書や経費の処理方法などがあいまいになりがちです。誤った処理を後から修正するのは時間もコストもかかるため、会社のスタートアップ期をスムーズに進めたいなら、やはり設立前後の早い段階で税理士のアドバイスを得るほうが安心といえるでしょう。
会社設立にかかる費用と「税理士依頼」のコスト
会社を設立する際には、登録免許税や定款認証などの基本的な法定費用に加え、必要に応じて税理士や司法書士など専門家への依頼コストが発生します。会社形態によって必要となる費用や、書類作成・手続きの流れも異なるため、事前にしっかりと把握しておくことが重要です
会社設立にかかる基本費用(登録免許税・定款認証など)
会社を設立する形態には株式会社と合同会社があります。それぞれに違いをまとめたものが以下の表です。
費用項目 | 株式会社 | 合同会社(LLC) |
---|---|---|
登録免許税 | 資本金の0.7% (最低15万円) ※資本金2,142万円未満でも15万円 |
資本金の0.7% (最低6万円) ※資本金857万円未満でも6万円 |
定款認証費用 (公証役場) |
5万円 | 不要 (認証は任意) |
定款印紙税 | 4万円 ※電子定款の場合は不要 |
4万円 ※電子定款の場合は不要 |
株式会社を設立する場合、最低でも「登録免許税15万円 + 定款認証5万円 + 印紙税4万円(電子定款の場合は0円)」がかかります。電子定款を利用すれば印紙代4万円を節約できるため、近年は電子定款が主流となっています。
合同会社の場合は、公証役場での定款認証が不要である点が大きな特徴です。そのため登録免許税と印紙税(電子定款なら0円)さえ支払えば設立可能です。結果的に株式会社と比べ、最低費用が安く抑えられることが多いです。
自分で手続きする場合の流れと費用
自分で設立手続きを行う場合の大まかな流れは以下のとおりです。
- 定款の作成
- 必要事項(商号・事業目的・本店所在地・資本金・出資者の情報など)を定め、定款の案を作成します。電子定款を利用すれば印紙税4万円が不要となります。
- 定款の認証(株式会社の場合)
- 公証役場で認証を受け、5万円の認証手数料を支払います(合同会社では原則不要)。
- 資本金の払込
- 定款に記載された資本金を、発起人名義の金融機関口座へ振り込み、振込証明書を用意します。
- 登記申請書類の作成・提出
- 法人の本店所在地を管轄する法務局に登記申請を行い、登録免許税を納付します。
この際にかかる費用は、以下のとおりです
- 株式会社:登録免許税15万円(最低)+ 定款認証5万円 + 印紙税4万円(紙定款の場合)
- 合同会社:登録免許税6万円(最低)+ 印紙税4万円(紙定款の場合)
電子定款を利用すれば印紙税4万円が不要になるため、事前に電子定款対応ソフト・サービスを利用することで費用を抑えることが可能です。
税理士に依頼した場合の費用相場
会社設立の手続きを税理士に依頼する場合、主に「スポット業務としての設立代行」や「顧問契約を前提とした設立サポート」などの形があります。税理士のサポートを受けることで、煩雑な書類作成や法務局への手続きのミスを防ぎやすくなるメリットがありますが、当然その分の報酬が必要です。
スポット業務(設立手続き・書類作成代行)の料金
- 相場感:5万円~20万円程度
- サービス内容:
- 定款作成・電子定款対応
- 登記に必要な書類の作成サポート
- 司法書士と連携して法務局への登記申請手続き代行
- 法人設立後の税務署や都道府県・市区町村への届出代行など
スポット業務として依頼する場合は、「書類作成と登記手続きのみ」を対応してもらうケースが多いです。そのため、設立後の会計処理や顧問業務は含まれないことがほとんどです。料金は依頼する作業範囲や税理士事務所の料金体系によって大きく異なるため、事前の見積もりが必要です。
顧問契約(毎月・毎年の顧問料)の料金帯
- 月額顧問料の相場:月1万円~5万円程度
- 年次決算料の相場:10万円~20万円程度(年間顧問料に含む場合もある)
税理士との顧問契約は、毎月の記帳代行や税務相談、決算期の申告書作成を一括で任せる形が一般的です。会社規模や取引件数、従業員数などによって報酬額は変動します。売上規模が大きい会社ほど手間がかかり、顧問料も高くなる傾向にあります。
記帳代行・決算申告を含むかどうかの確認ポイント
顧問契約の範囲に以下の業務が含まれるかどうかは、事務所ごとに異なるため注意が必要です。
- 記帳代行(日々の会計データ入力)
- 決算書類作成・法人税等の申告書作成
- 年末調整や給与計算
「月額○万円」であっても、実際には別途オプション料金が発生する場合もあるので、契約前に作業範囲を明確に確認しましょう。
創業助成金を活用して法人設立コストを抑える方法
- 創業助成金(各自治体や国の制度)
- 例:東京都の「創業助成事業」、厚生労働省の「特定求職者雇用開発助成金」など
- 条件:創業後5年以内、一定の雇用創出がある、あるいは事業計画の審査など
助成金によっては、事前の審査や申請手続き、報告義務が課されることも多いため、取得ハードルは高いですが、うまく利用できれば設立初期の資金繰りを大きく改善できます。顧問税理士や行政書士と連携しながら情報を収集し、要件を満たせるか検討しましょう。
顧問契約前提で設立手続きを無料対応してくれる税理士事務所もある
近年では、顧問契約(一定期間の契約)を前提として、以下のようなサービスを行う事務所も増えています。
- 設立手続き代行報酬を無料または格安で提供
- 電子定款の作成を無料で行うサービス
ただし、その分月額顧問料が相場より高めに設定されている場合や、一定期間解約できないなどの条件がある場合もあるため、契約前には比較検討が必要です。
会社設立後に税理士がいると得られるサポート
税理士は、会社の決算・会計処理だけでなく、資金調達や経営アドバイス、税務調査の際のフォローなど、幅広いサポートを提供してくれます。以下では、会社設立後に税理士を活用することで得られる具体的なメリットについて詳しく解説します。
決算・会計処理・各種申告のサポート
日々の記帳指導、年次決算、法人税・消費税申告
会社の経理業務で不可欠なのが、日々の取引を正確に記録する「記帳」です。税理士は、正確な仕訳や科目の使い分けの方法、経理ソフトの操作方法などを指導し、日常の会計処理をスムーズに進めるためのサポートを行います。
また、事業年度末には決算作業が必要になりますが、経理の知識が浅いと決算書の作成に時間がかかったり、誤った処理をして税務署へ提出してしまうリスクがあります。税理士は必要な書類を整理しながら正しい決算書を作成し、法人税や消費税の申告書を作成・提出まで代行できます。
電子申告のサポート、税制改正への対応
現在は電子申告が一般的になりつつありますが、電子申告に必要なソフトウェアや電子証明書の取得、利用方法の習得など、煩雑な手続きが多く存在します。税理士はこれらの準備から実際の電子申告の手順までサポートしてくれるため、ミスや手戻りを減らすことが可能です。
また、毎年のように行われる税制改正に対しても専門知識をもって対応してくれます。改正内容を踏まえたうえで、税務負担を最小限に抑えるアドバイスや優遇税制を活用するタイミングなどを提案してもらえる点は、大きなメリットです。
資金繰りや経営アドバイス
資金調達方法や銀行融資の交渉支援
事業を継続・拡大していくうえで避けて通れないのが資金繰りの問題です。税理士は、事業計画の策定をサポートしたり、金融機関に提出する書類の整合性を確認したり、場合によっては銀行との交渉に同席してくれることもあります。
特に会社設立後間もない時期は信用力が低いため、融資のハードルが高い場合がありますが、税理士が間に入ることで必要書類の作成がスムーズになり、融資審査に通りやすくなる可能性があります。また、補助金や助成金の申請に関しても、有益な情報を得られるケースがあります。
予算管理・キャッシュフロー計画
経営者が最も神経を使うポイントの一つは、「どのタイミングで、いくらお金が必要になるか」を把握し、資金が回らなくなるリスクを回避することです。税理士は会社の売上や費用の状況を定期的に確認し、予算管理やキャッシュフローの計画づくりをサポートできます。
たとえば、一定期間ごとに試算表を作成し、実績と計画を比較しながら今後の資金需要や支出を予測することで、無理のない資金計画を立てることが可能になります。適切な資金繰りは経営上の安心感に直結し、事業の成長戦略をスムーズに描くことにもつながります。
税務調査に対応してくれる
事前対策や税務当局との折衝
突然税務署から調査の連絡が入ると、多くの経営者は戸惑ってしまいます。税理士がいれば、事前にどのような書類が必要か、どのような点をチェックされやすいかを把握できるため、スムーズに準備ができます。また、税理士が立ち会って説明してくれることで、調査官からの質問に対して適切な回答ができ、不要な指摘を避けられる可能性が高まります。
税務当局との交渉には専門知識が必要となりますが、税理士はこれまでの経験や実績を活かして、柔軟に対応してくれます。結果として調査の負担が軽くなり、経営者は本来の業務に集中することができます。
適切な書類整備のアドバイス
税務調査で重要視されるのが、日々の帳簿や領収書、請求書などの整備状況です。税理士は、普段から書類をどう保存・整理しておくべきか、どのような形式が適切かといったアドバイスを行い、会社の内部管理体制の強化を図ります。
こうしたアドバイスを受けていれば、税務調査が来ても書類の不備による追徴課税やペナルティを避けやすくなるだけでなく、後々の会計処理・決算作業にも好影響を及ぼします。
経営に関する幅広い専門家ネットワーク
社会保険労務士・行政書士・司法書士などとの連携が期待できる
会社経営では、税務や会計以外にも労務管理や許認可申請、法的手続きなど、多岐にわたる専門業務が発生します。税理士事務所によっては、社労士・行政書士・司法書士などの専門家とネットワークを築いているケースが多く、必要に応じて紹介してもらうことができます。
これによって、労働保険や社会保険の手続き、各種許認可の取得、商業登記関連の手続きといった、設立後すぐに必要となる作業や、事業拡大時に必要となる法務・労務の専門業務をスムーズに進められます。
ワンストップでバックオフィス業務をフォロー
税理士は会計・税務の専門家ですが、他の士業との協力体制が整っている事務所を選ぶと、バックオフィス関連のほとんどの業務をワンストップで対応してくれる場合があります。たとえば、給与計算や社会保険の手続き、定款変更や増資手続きなど、会社の中核となる業務以外をまとめて依頼できるため、経営者自身が複数の専門家に連絡を取る手間を減らせます。
こうしたワンストップサービスを受けられる事務所を選択することで、経営者が本来のビジネスに集中しやすくなるという大きなメリットがあります。
良い税理士を選ぶためのチェックポイント
いい税理士はダメな税理士と比べてどこが違うのか?ポイントをまとめると以下7つになります。
- コミュニケーション能力が高い
- レスポンスが迅速
- 経験が豊富で解決能力がある
- 透明性のある報酬体系を持ち、料金が明瞭である
- 情報収集力・提案力に長けている
- 一定のITスキルがある
- 事務所全体のサポート体制がしっかりしている
具体的な内容と、初回面談で見極める方法を解説します。
❶コミュニケーション能力が高い
いい税理士はコミュニケーション能力が高いです。コミュニケーション能力が高いと、クライアントのニーズを正確に把握し理解できます。複雑な税法や会計について説明するには、クライアントが何がわからないのか、何を求めているのかを知らなければ、いいサービスは提供できません。
見極める方法
初回の面談や相談の際に、あなたの質問や懸念にどのように対応するかを注意深く観察します。また、税理士が説明する内容が分かりやすく、わかりやすい言葉で説明してくれるかどうかもチェックします。
❷レスポンスが迅速
いい税理士は問い合わせや相談の対応が迅速です。特に税務や会計の緊急の問題が発生したときほど、早く対応します。
見極める方法
具体的には、最初の面談でのコンタクトや問い合わせに対する返信の速さや丁寧さを評価します。また、緊急の問題が発生した場合にどれだけ迅速に対応してくれるかも確認します。
❸経験が豊富で解決能力がある
さまざまな業種や規模の企業に対処してきた経験豊富な税理士は、解決策を提供できる能力があります。
会社経営は、業績の悪化や資金難など、いろんな問題に直面するので、相談に対し解決策の提示ができると頼りになるでしょう。
見極める方法
税理士の経歴や実績を調査し、過去にどのような案件に携わってきたかを確認します。また、税理士のホームページで実際の事例やクライアントの声も参考になります。
❹透明性のある報酬体系を持ち、料金が明瞭である
優れた税理士は、透明性のある報酬体系を持ち、クライアントに料金を明確に提示します。隠れた費用や不透明な料金体系は避けるべきです。
見極める方法
初回の面談や契約時に、税理士から料金体系や料金の詳細を明確に説明してもらいます。また、事前に料金見積もりを提示してくれるかどうかも確認しましょう。
❺情報収集力・提案力に長けている
税制は毎年改正されるので、税理士は最新の情報を収集し、事業者がどうすべきか提案する能力が求められます。ここ1・2年でもインボイス制度や電子帳簿保存法などの改正・施行が相次ぎました。
わかりにくい税制については、具体策を提案できるのが税理士の力量です。
見極める方法
初回の相談や面談で、税理士が最近の法改正で、どう対応したかの具体策を聞き出すことで、税理士の情報収集力や提案力を見極めましょう。
❻一定のITスキルがある
税理士と契約をすると、申告や決算では書類のやり取りが多くあります。税理士にITスキルがあると、書類ではなく電子データのやり取りが可能です。
紙媒体のものを電子化すると、処理が迅速になり、ストレスも軽減されるので、今やITスキルがあるのは必須です。
見極める方法
税理士がどのような会計ソフトウェアやテクノロジーを使っているかを確認します。また、デジタル化やオンラインサービスの提供に対する税理士の取り組みも注目します。
❼事務所全体のサポート体制がしっかりしている
平常時は問題なくても、繁忙期に税理士の対応のレスポンスが悪くなることはよくあります。いい税理士は、不測の事態に備えてサポート体制も整えています。
見極める方法
初回の面談時に事務所の構成やスタッフの熟練度を確認します。また、税理士不在時の対応についてもヒアリングしてみることをお勧めします。
いい税理士の見極め方についてはこちらの記事でくわしく解説しています。
いい税理士はすぐわかる 初回面談で見極めるポイント7つと具体的な探し方
税理士を探す9つの方法
税理士を選ぶことは事業の成功に大きく関わる重要な決断です。以下では、一般的な9つの探し方について、それぞれのメリットとデメリットを詳しく解説します。
❶税理士紹介サイト
税理士紹介サイトは、専門のコンサルタントが間に入って最適な税理士とのマッチングを支援するサービスです。
- 最も効率的な方法で、希望に合う税理士を無料で紹介してもらえる
- 相性が合わない場合の断りも代行してくれるため、心理的負担が少ない
- ただし、登録している税理士のみが対象となるため、選択肢は限定される
❷インターネット検索
最も一般的な方法ですが、情報の質を見極める必要があります。
- 手軽に多くの税理士情報にアクセスできる
- 検索上位の結果が必ずしも良い税理士とは限らない点に注意
- 相性が悪い場合の断りづらさが大きな課題となる
❸友人・知人の紹介
従来から多く使われてきた方法で、信頼性の高さが特徴です。
- 紹介者を介するため、基本的な信頼性は担保される
- 選択肢が限られ、必ずしも最適な税理士と出会えるとは限らない
- 相性が合わない場合の断りにくさが大きな心理的負担となる
❹銀行からの紹介
特に事業規模の大きい場合に有効な方法です。
- 融資に強い税理士が多く、事業計画の策定にも強い
- 銀行側の都合が優先される可能性があるため注意が必要
- 小規模事業者には必ずしも適していない場合がある
❺税理士会での紹介
公的機関を通じた信頼性の高い方法です。
- 確実な情報を得られ、偽税理士のリスクがない
- 公開情報が限定的で、詳細な情報収集には労力が必要
- 自己検索が必要なため、効率は良くない
❻確定申告会場での探索
実際の対面を通じて判断できる方法です。
- 税理士の実務能力や人柄を直接確認できる
- 確定申告時期に限定される
- 混雑時は十分な相談時間が取れない
❼異業種交流会への参加
自然な出会いを通じて信頼関係を築ける方法です。
- 気軽に交流でき、人となりを知ることができる
- 適任の税理士と出会える確率は比較的低い
- ビジネスパートナーとしての関係構築に時間がかかる
❽商工会議所の利用
地域に密着した税理士との出会いが期待できます。
- 小規模事業者向けに適している
- 誠実な税理士が多い傾向にある
- 必ずしも専門性や経験が豊富とは限らない
❾SNSでの探索
現代的なアプローチによる探し方です。
- 日常的な発信から価値観の共有がしやすい
- 実際に活動している税理士が少ない
- 契約までのプロセスが不明確な場合がある
これらの方法の中で、特に税理士紹介サイトは効率性と利便性の面で優れています。手間とストレスを最小限に抑えながら、適切な税理士とのマッチングが期待できる点が、忙しい事業者から高く評価されています。ただし、どの方法を選ぶにせよ、自身のニーズと状況に合わせて慎重に検討することが重要です。
税理士の探し方については、こちらの記事でくわしく解説しています。
税理士の探し方9選!わからない人向け失敗しないポイント解説
まとめ
会社設立には税理士の関与が必須ではないものの、節税や法令違反回避など多くのメリットがあります。
司法書士が登記を専門とする一方、税理士は資本金や決算期の最適設定、補助金・助成金や融資のサポート、記帳・申告など経理業務全般を代行・支援してくれます。
特に設立前から依頼すれば、消費税の免税事業者期間の活用や定款内容の調整など、重要事項をプロの視点で決定でき、後から修正する手間や費用を抑えられます。
逆に設立後に依頼すると経営方針を固めてから探せる利点がある一方、初期の税務判断で損をするリスクも否めません。
よい税理士を選ぶには、コミュニケーション力・ITスキル・報酬体系の透明性などを見極めることが重要です。探し方には税理士紹介サイトの利用、知人からの紹介、商工会議所への相談などがあり、複数の候補を比較検討して相性の良い税理士を見つけると、設立後の経営が一層スムーズに進みます。