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税務調査

税務調査の遡及期間は原則5年|3年・7年になるケースも詳しく解説

しょうじ

税理士事務所で約20年にわたり勤務し、税務申告や税務調査の立ち会い、開業手続き、融資サポートなど幅広い実務を経験。これらの知見をもとに、起業家向けに、業界経験者ならではの専門的な視点と、客観的な視点の双方から、有益な情報を発信しています。

個人事業主や副業をしている方の中には、「今年は忙しかったから……」「あとでまとめて申告しよう」と思いながら、申告せずに数年経ってしまったという方もいるでしょう。しかし、心のどこかで「税務署から連絡が来るのでは?」という不安を抱えていませんか?

実は、税務調査には「何年まで遡って調査できるか」という明確なルールが定められています。本記事では、そのルールと例外を、国税通則法に基づいて詳しく解説していきます。

原則としての遡及期間は5年

税務署が過去の申告内容を調べて修正(更正)や決定を行える期間は、原則として「法定申告期限から5年以内」と定められています。

国税通則法第70条第1項に基づくルール

「法定申告期限から5年以内」というのは、国税通則法第70条によるものです。

国税通則法第70条

第七十条 次の各号に掲げる更正決定等は、当該各号に定める期限又は日から五年(第二号に規定する課税標準申告書の提出を要する国税で当該申告書の提出があつたものに係る賦課決定(納付すべき税額を減少させるものを除く。)については、三年)を経過した日以後においては、することができない。

一 更正又は決定 その更正又は決定に係る国税の法定申告期限(還付請求申告書に係る更正については当該申告書を提出した日とし、還付請求申告書の提出がない場合にする第二十五条(決定)の規定による決定又はその決定後にする更正については政令で定める日とする。)
二 課税標準申告書の提出を要する国税に係る賦課決定 当該申告書の提出期限
三 課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定 その納税義務の成立の日

国税通則法 | e-Gov 法令検索

たとえば、令和6年分の確定申告の期限は令和7年3月15日です。この場合、税務署は令和12年3月15日まではその年分の調査や更正を行うことができます。

実際に何年分の帳簿が必要になる?

無申告の方でも、基本的には「5年分の帳簿・資料の保存」が求められます。突然調査が始まっても対応できるよう、最低限5年分は整えておくべきです。

実務上は3年が一般的

法律上、税務調査は「最大5年まで遡ることができる」とされていますが、実際の調査現場ではほとんどの場合「過去3年分」で調査が終了する傾向にあります。

実務上は3年になる理由

申告内容や帳簿が適正で大きなミス・不備がない場合、税務署が過去3年分を確認し問題がなければ、それ以上遡る必要がないため調査対象が3年に限定されます。

また、適正な税務処理をしている納税者に対し、膨大な手間をかけてまで5年分調べる意味が薄いため、3年で切り上げることが多くなっています。

5年遡って調査される場合

売上の計上漏れや誤りが多額な場合は、同様の問題が過去にもあった可能性を疑われて、調査対象期間が5年まで拡大されることがあります。無申告の場合も5年になります。

また、事業規模が大きい、同じ性質のミスが複数年発見されるなどの場合、税務署は「意図的なものではなくても、他の期間にも同じ誤りがあるのでは」と考え、5年分の調査を実施します。

悪質なケースは7年まで遡及

意図的で悪質な脱税や不正がある場合は7年までさかのぼって調査が行われます。これは国税通則法第70条第5項の規定によります。

国税通則法第70条第5項の規定とは?

国税通則法第70条第5項

5 次の各号に掲げる更正決定等は、第一項又は前二項の規定にかかわらず、第一項各号に掲げる更正決定等の区分に応じ、同項各号に定める期限又は日から七年を経過する日まで、することができる。

一 偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、又はその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税(当該国税に係る加算税及び過怠税を含む。)についての更正決定等

二 偽りその他不正の行為により当該課税期間において生じた純損失等の金額が過大にあるものとする納税申告書を提出していた場合における当該申告書に記載された当該純損失等の金額(当該金額に関し更正があつた場合には、当該更正後の金額)についての更正(第二項又は第三項の規定の適用を受ける法人税に係る純損失等の金額に係るものを除く。)

三 所得税法第六十条の二第一項から第三項まで(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)又は第六十条の三第一項から第三項まで(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例)の規定の適用がある場合(第百十七条第二項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出及び税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第三十条(税務代理の権限の明示)(同法第四十八条の十六(税理士の権利及び義務等に関する規定の準用)において準用する場合を含む。)の規定による書面の提出がある場合その他の政令で定める場合を除く。)の所得税(当該所得税に係る加算税を含む。第七十三条第三項(時効の完成猶予及び更新)において「国外転出等特例の適用がある場合の所得税」という。)についての更正決定等

国税通則法 | e-Gov 法令検索

この条文により、悪質なケースでは7年まで遡って調査・更正が可能となります。

偽りその他不正な行為とは?

偽りその他不正な行為とは、具体的には以下のような場合を言います。

  • 収入や利益の過少申告
    実際より少ない金額を意図的に申告する行為(例えば給与の一部を除外して申告するなど)
  • 架空取引や架空仕入の計上
    存在しない取引をあったように装って帳簿に記載すること
  • 売上の圧縮や隠蔽
    本来計上すべき売上を計上せず、預金口座を使い分けるなどして利益を隠すこと
  • 二重帳簿その他の偽計工作
    調査官の指摘や課税を免れる目的で事実と異なる帳簿を作成・保存すること
  • 他者を使った不正
    納税者本人だけでなく、本人の代理人や委任を受けた者(税理士など)がこうした行為をしても該当します

国税不服審判所 偽りその他不正の行為

単なる申告漏れや計算ミスでは原則として「偽りその他不正な行為」には該当しません。極めて悪質な意図的ケースが対象です。

また、行為の主体は納税者本人に限られず、代理人や補助者の行為であっても、納税義務確定手続き上で税額を免れた場合には適用されます

こうした「意図的な操作」があったと税務署に判断されれば、7年遡る調査が行われる可能性が高まります。

無申告=7年調査になるとは限らない理由

無申告であっても、意図的な隠蔽や偽装がなければ、通常は5年までの調査にとどまることが多いです。ただし、繰り返し無申告であったり、多額の所得隠しが疑われる場合には「悪質」と判断され、7年調査が行われることもあります。

調査対象期間の早見表

ケース遡及期間根拠法令・実務
通常の税務調査3年実務上の慣例
問題がない場合5年国税通則法 第70条第1項
仮装・隠蔽など悪質な場合7年国税通則法 第70条第5項

無申告のまま放置している方へ

無申告のままにしておくと、調査期間が長くなったり、加算税・延滞税が発生したりするリスクが高まります。

まずは現状を整理してみましょう。「何があって、何が不足しているのか」現状を整理することで、対応策が見えてきます。

不安を感じているうちが対応のチャンス

税務署からの通知が来てからでは、対応の選択肢は限られます。今動けば、修正申告や期限後申告でリスクを最小限に抑えることができます。

税務署から来る前に自ら動くべき理由

税務署から連絡が来る前に自ら動くべき理由は、自主的な申告によって加算税が軽減される可能性があるからです。

また、税務調査が始まる前に自発的に申告しておくことで、税務署からの印象が良くなり、調査時の対応も比較的柔軟になる傾向があります。こうした点からも、事前に自ら行動することには大きなメリットがあると言えるでしょう。

税務調査に強い税理士への相談をおすすめします

無申告の不安を一人で抱えるのではなく、税務調査の対応経験が豊富な税理士に相談することで、最も穏便かつ正確な解決に近づけます。

税務調査に強い税理士の選び方は以下の記事でくわしく解説しています。
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