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税務調査

税務署に目をつけられる金額や個人の特徴5選〔国税庁の報道発表〕で判明

2024年1月7日

税務署に目をつけられる個人の特徴5選

「税務署に目をつけられる個人」はどんな人か?
それを知るには、国税庁が毎年発表する税務調査状況の報道発表を見るのが一番です。それによると、主な取り組みとして以下の5つが挙げられています。

つまり、直近の令和3事務年度では、以下の5つの項目に属する個人に積極的に調査が行われていたようです。

税務署に目をつけられる個人

  • 富裕層
  • 海外投資を行っている個人
  • インターネット取引を行っている個人
  • 無申告者
  • 消費税の輸出物品販売場制度の悪用をする個人

令和3事務年度 所得税及び消費税調査等の状況

富裕層

富裕層に対する調査は、大口の有価証券や不動産所有者、高所得者、国際的な投資を行う個人など、資産運用の多様化と国際化を考慮して積極的に行われています。

令和3事務年度には、2,227件(前事務年度2,158件)の実地調査(特別・一般)が実施されました。1件当たりの申告漏れ所得金額は3,767万円(前年2,259万円)で、所得税の実地調査全体の1,613万円(前年1,480万円)に比べて2.3倍増加し、総額は839億円(前年487億円)でした。

ポイント

1件当たりの追徴税額は1,067万円(前年543万円)で、所得税の実地調査全体の323万円(前年275万円)に比べて3.3倍増加し、総額は238億円(前年117億円)となりました。

特に、海外投資を行う富裕層に対する1件当たりの追徴税額は2,953万円(前年879万円)で、所得税の実地調査全体の323万円に比べて9.1倍増加しています。

海外投資を行っている個人

国際化に対応し、資料情報の収集を強化し、海外投資家や海外資産所有者に対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約に基づく情報交換制度、そしてCRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)を活用して積極的に調査を実施しています。

令和3事務年度には、2,043件(前事務年度2,172件)の実地調査(特別・一般)が実施され、1件当たりの申告漏れ所得金額は3,690万円(前年2,239万円)で、所得税の実地調査全体の1,613万円(前年1,480万円)と比べて2.3倍増加し、総額は754億円(前年486億円)となりました。

ポイント

1件当たりの追徴税額は1,119万円(前年527万円)で、所得税の実地調査全体の323万円(前年275万円)と比べて3.5倍増加し、総額は229億円(前年114億円)となっています。

 

インターネット取引を行っている個人

 国税庁では、インターネット取引事業における個人の所得税調査において、資料情報の収集と分析を重視し、積極的な調査を実施しています。

令和3事務年度には、839件(前事務年度639件)の実地調査(特別・一般)が実施されました。

ポイント

1件当たりの申告漏れ所得金額は1,382万円(前年1,478万円)となり、申告漏れ所得金額の総額は116億円(前年94億円)となりました。

1件当たりの追徴税額は266万円(前年300万円)で、追徴税額の総額は22億円(前年19億円)となりました。

無申告者

 無申告は納税者間で不公平感を引き起こす可能性があるため、的確かつ厳格に対応する必要があります。このため、資料情報の収集と活用を強化し、実地調査だけでなく簡易な接触も積極的に活用しています。

無申告者における所得税の調査状況は、令和3事務年度には3,828件(前事務年度2,993件)の実地調査(特別・一般)が実施されました。

1件当たりの申告漏れ所得金額は2,923万円(前年2,565万円)で、所得税の実地調査全体の1,613万円(前年1,480万円)に比べて1.8倍増加し、申告漏れ所得金額の総額は1,119億円(前年768億円)となりました。

1件当たりの追徴税額は497万円(前年292万円)で、所得税の実地調査全体の323万円(前年275万円)の1.5倍となり、追徴税額の総額は190億円(前年87億円)に上ります。

無申告者における消費税の調査状況は、令和3事務年度には5,257件(前年3,294件)の実地調査(特別・一般)が実施されました。

1件当たりの追徴税額は245万円(前年227万円)で、消費税の実地調査全体の168万円(前年137万円)の1.5倍となり、追徴税額の総額は129億円(前年75億円)に上ります。

無申告がバレる経緯やその対処法についてはこちらの記事でくわしく解説しています。
せどりやアフィリエイトの無申告がバレるまでの経緯3パターンを事例付きで解説

消費税の輸出物品販売場制度の悪用をする個人

消費税の輸出物品販売場制度を悪用し、免税で購入した商品を国内で転売する事例に対しても積極的に調査が行われています。

令和3事務年度には、30件(前事務年度2件)の実地調査が実施されました。

調査結果、即時徴収の対象となった税額の総額は12億円に上り、1件当たりの追徴税額は4,143万円となりました。

税務署に目をつけられる個人事業4つのポイント

前述の目をつけられる個人の特徴のうち、海外投資を行っている個人は富裕層に多く、数的な割合としては個人の中では少数の部類です。残りの大部分は、事業を行う個人が該当します。そこで、個人事業に絞って、目をつけられるポイントをまとめました。

税務署が税務調査に行く際、ほとんどの場合、確定申告書をもとに行く先を選定しています。では、個人の税務調査はどんな時に来るのか?というと、以下4つがポイントになります。

ポイント

  • 粗利率、利益率が不自然
  • 利益が増えている個人事業主
  • 業界的に儲かっている業種
  • 不正が多い業種

粗利率、利益率が不自然

 税務調査の選定では、KSK(国税総合管理)というシステムが使われています。このシステムでは、個人や法人の確定申告書をもとにあらゆる業種の売上・仕入・経費がデータとして蓄積されていて、業種ごとの利益率などが把握できるようになっています。

一般的に不正をする場合、売上を除外したり、経費を、水増ししたりするので、利益率が変動します。この異常値を検出して税務調査の対象に選定に活用しています。

利益が増えている個人事業主

 税務署が行う税務調査は課税の公平を主旨に行われています。つまり誤りや不正の申告を是正することが大義名分で、その結果を公表しています。そのため、調査に出向いた以上、一定の成果を上げる必要があります。そうなると、不正を行う動機と否認した場合の追徴税額等の成果を考えれば、利益が増えている個人事業主はターゲットの一つになります。

業界的に儲かっている業種

業界的に儲かっている業種も税務調査のターゲットになります。以前、コロナ禍では、在宅期間が多くなり、ウーバーイーツなどの利用者が増え、業界的には活況でした。その際、国税庁は、ウーバーイーツに対して、配達員の情報提供を求めています。

出典:朝日新聞デジタル

不正が多い業種

不正が多い業種も税務調査が重点的に行われます。国税庁は課税の公平を目指しているため、不正の温床となるような事態を徹底的に排除する姿勢が見て取れます。

ちなみに、令和3事務年度の調査状況によると、個人の所得税で不正が多かった業種のランキングは以下のとおりです。

事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種

順位業種目申告漏れ所得金額
(1件当たり)
追徴税額
(1件当たり)
1位経営コンサルタント2,266万円611万円
2位システムエンジニア2,150万円519万円
3位ブリーダー2,136万円518万円
4位商工業デザイナー1,752万円410万円
5位不動産代理仲介1,656万円453万円
6位外構工事1,517万円254万円
7位型枠工事1,507万円239万円
8位機械部品受託加工1,507万円319万円
9位一般貨物自動車運送1,493万円195万円
10位司法書士、行政書士1,440万円358万円
出典:令和3事務年度 所得税及び消費税調査等の状況

税務署に目をつけられる金額はいくらか?売上1,000万円の理由と根拠

税務署が税務調査に選定される基準として目にする売上1,000万円。この金額は消費税の課税事業者になる売上の金額を指しています。では、1,000万円を超えなければ選定の対象外かというと、そうでもありません。

売上1,000万円の理由

 年間の売上高が1,000万円を超えると、課税事業者になります。個人の税務調査では、消費税の課税事業者は、所得税と同時に消費税の調査も受けることになります。

税務署側の視点で行くと、所得税の調査と同時に消費税の調査も行える方が効率がいいので、基本的に課税事業者の規模をターゲットにするのが一般的です。

ギリギリ超えないときがヤバい理由

 売上高が1,000万円未満なら、何の心配もいらないかと言えばそうでもありません。免税事業者の中には、課税事業者になりたくないため、意図的に売上を翌年に回すなどして、売上が1,000万円を超えないように操作している事業者もいます。

当然、税務署側もそう言った事例を知っているので、ギリギリ1,000万円に届かない事業年度が複数年にわたっている場合などは、疑いの目で見ていて、税務調査の対象に選定する場合もあります。

税務調査は、個人はいくらからが対象になるのか?についてはこちらの記事をどうぞ
税務調査、個人はいくらから対象か?1,000万円が基準といわれる理由

税務調査はどこまで調べられるのか?

税務調査は、大別すると、「強制調査」と「任意調査」があります。一般的に税務調査というのは、「任意調査」の方で、納税者の同意のもと行われます。ここでは任意調査を前提で解説します。

税務調査で見られるものは?

税務調査は、基本的に総勘定元帳、売上に関する請求書、仕入れ・経費入力に関する請求書、領収書を中心に見ます。その他必要に応じて、納品書、契約書などの書類を調べます。

税務署はどこまで調べるの?個人の通帳は?

税務調査では通帳も調べられます。個人の場合、事業用の通帳はもちろん、事業用とプライベートが混在している通帳であれば、事業の入出金が記載されるわけなので、当然見ることになります。

では、プライベートのみの通帳はどうなるか?というと、そもそも、税務調査では、売上の隠ぺいなどを調べるのが目的なので、もちろん見ます。

税務調査でまずやることは?

税務調査は、①税務調査の日程調整、②税務署からの事前通知、③実地調査、④税務署内での審議、⑤申告是認または修正申告

という流れで進んでいきます。

税務調査の流れ

  • 税務調査の日程調整
  • 税務署からの事前通知
  • 実地調査
  • 税務署内での審議
  • 申告是認または修正申告

税務調査になった場合に、納税者が最初にやるべきことは、税理士に立ち会ってもらうなら、税理士を探すこと。

それから、実地調査で必要な書類の準備になります。

税務調査では、一般的には以下の書類が最低限必要です。

総勘定元帳、通帳のコピー、売上に関する請求書、仕入・経費に関する請求書、領収書。従業員を雇用している場合、賃金台帳・源泉徴収簿。取引先や不動産を賃貸している場合の契約書。

税務調査の対象期間

任意調査の場合、税務調査の対象期間は、直近の事業年度から3期分が目安になります。税務調査が実施される期間は、実地調査で概ね2日~3日間程度です。税務調査の連絡があってから、最終的に修正申告や申告是認として税務調査が完了するまでの期間は、調査内容によりますが概ね1ヶ月から2ヶ月位かかります。

税務調査、何人で来る?

一般的な任意調査の場合、税務調査官は1人で来ることがほとんどです。たまに、同行する調査官がいることもありますが、主に指導目的で同行させることが多く、担当の税務調査官の指示で補助的な業務に従事しています。

税務調査の連絡対応、なぜ二つ返事はNGなのか?

じつは、あまり知られていませんが、税務調査の日程は調整が可能です。多くの人は、最初に税務調査官が提示する日程に従わなければいけないと思っているようです。

でも、実際はこちらの要望ももちろん聞いてくれるので、日程は両者で調整するのが普通です。

なぜ、二つ返事で税務調査官の提示した日程にOKしない方が良いか?というと、事前に準備をしっかりして、十分な対策を練るためです。

税務調査の連絡が来たらどうすればいい?

確定申告をしていて、税理士に依頼していれば、多くの場合、税務代理権限証書を添付しているので、税務調査の連絡は税理士に行きます。

 もし、税理士に依頼しているのに、税務署から税務調査の連絡が来た場合は、まず税理士に連絡することをおすすめします。

確定申告書を自分で提出している場合、税務調査の連絡が来たときは、選択手段が二つになります。

  • 税理士の立ち会いなしで税務調査に対応する
  • 税理士に税務調査に立ち会ってもらう
税理士の立ち会いなしで税務調査に対応する
税理士に依頼せず、自分で税務調査に対応する場合には、税務調査の日程を打ち合わせすることになります。税務調査の段階で提示する資料を準備する期間が必要なので、最低でも1週間は時間をとった方が無難です。
税理士に税務調査に立ち会ってもらう
税理士に立会ってもらう場合、税理士を探す必要があるので、一旦は日程の打ち合わせを保留します。
この際、税務調査官には「日程を調整するので、折り返し連絡します」と告げれば、待ってくれます。
その後、速やかに立会ってくれる税理士を探します。税理士が見つかったら、税理士に依頼すれば、税務署への税務調査の日程調整から任せて大丈夫です。

税務調査に強い税理士の探し方・選び方はこちらの記事でくわしく解説しています。
税務調査に強い税理士の探し方・選び方

税務署から電話がかかってきたとき、無申告だったらどうすればいいか?

税務署から連絡が来た時点で無申告だった場合、真っ先に対応すべきは申告書の提出です。税務調査の連絡が来ても申告書の提出は可能です。期限には間に合っていないので、「期限後申告」の扱いになりますが、「無申告」ではなくなります。

無申告と期限後申告では雲泥の差があります。まず、無申告の時点で「無申告加算税」が発生しますが、申告書を提出すれば回避できます。

また、税額が発生する場合には、税務調査前と後では加算税の税率が大きく違います。

税務調査を無視するとどうなる?

税務調査を無視すると、再度の呼び出しや書類提出要請がある可能性があります。税務調査は、必要に応じて税務職員が行う権利が法的に認められており、拒否することはできません。

税務調査を無視すると、最終的には、国税通則法第128条により1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

国税通則法第128条

第百二十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 第二十三条第三項(更正の請求)に規定する更正請求書に偽りの記載をして税務署長に提出した者
 第七十四条の二、第七十四条の三(第二項を除く。)若しくは第七十四条の四から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
 第七十四条の二から第七十四条の六まで又は第七十四条の七の二(特定事業者等への報告の求め)の規定による物件の提示若しくは提出又は報告の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出し、若しくは偽りの報告をした者

出典:e-GOV法令検索

まとめ

国税庁が毎年発表する税務調査状況から、税務署が特に注目する個人の特徴が分かります。主な特徴と対応策は以下のとおりです。

富裕層
大口の有価証券や不動産所有者、高所得者、国際的な投資家などが税務署の重点対象。令和3事務年度には2,227件の実地調査が行われ、追徴税総額は839億円に上った。
海外投資を行っている個人
国際的な資産や投資を持つ個人に対する積極的な調査が行われています。令和3事務年度には2,043件の実地調査が実施され、追徴税総額は229億円に増加。
インターネット取引を行っている個人
インターネット取引に携わる個人に対して、資料情報の収集と調査が行われています。令和3事務年度には839件の実地調査が実施され、追徴税総額は22億円に上昇。
無申告者
無申告は公平性に影響を与える可能性があるため、厳格に対応。所得税の無申告者に対する調査では、追徴税総額が1,119億円に増加。
消費税の輸出物品販売場制度の悪用をする個人
輸出物品販売場制度の悪用に対する調査が積極的に行われています。令和3事務年度には30件の実地調査が実施され、税額総額は12億円となりました。

個人事業に焦点を当てると、税務署が選定するポイントは以下の通りです。

ポイント

  • 粗利率や利益率が不自然に高い場合
  • 利益が急増している個人事業主
  • 業界全体で儲かっている業種
  • 不正が多い業種

また、税務調査は通帳や書類の提出などが主要な要素で進行し、適切な対応が重要です。税務署の提示した日程に二つ返事をせず、準備や対策を検討し、税理士の立ち会いも検討することが効果的です。税務調査の期間は約2〜3日で、連絡から完了まで約1〜2ヶ月かかることが一般的です。無申告の場合、期限後申告が選択肢として存在し、税務調査を無視すると法的な制裁が科せられる可能性があるため、対応が必要です。

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